【NQNニューヨーク=松本清一郎】26日の米国株市場で「個人投資家vsヘッジファンド」の攻防がまたも繰り広げられた。ヘッジファンドが空売りを積み上げた銘柄に個人が集団で買いを仕掛け、踏み上げ(売り方の買い戻しによる株価上昇)を誘うやり方だ。そもそも空売り残高が多い銘柄は割高感が強いか、業績が低迷している銘柄が大半だ。実態と乖離(かいり)したマネーゲームの行き着く先を警戒する声も聞かれる。
■レディットで情報交換
前日に続き26日もゲーム専門店、ゲームストップ株に市場の関心が集まった。浮動株に対する空売りの比率が直近で138%に達し、踏み上げ狙いの個人のデイトレーダーたちの標的になった。デイトレーダーたちは交流サイト「レディット」で情報を交換し、対象となる銘柄に連携して買いを仕掛ける。ゲームストップ株は一時、前日比2倍に急騰した。
思わぬ茶々も入った。26日の引け後。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がレディットとリンクさせたうえで「Gamestonk!!」とツイッターに投稿するとゲームストップ株に関心が集まり、買いをあおる形になった。同株は通常取引を92.7%高で終えた後、時間外でさらに40%超上昇した。stonkとはstock(株)を一文字変え、おかしな値動きをする株を揶揄(やゆ)する際に使う隠語だ。
■売り仕掛けもあり得る
QUICK・ファクトセットを使って浮動株に対する空売り残高の比率が高い銘柄を調べると、上位銘柄の株価上昇が顕著だ。空売り比率の上位30銘柄は26日に前日比で平均13.8%上昇した。年初来の上昇率は87.1%に達する。ヘッジファンドの空売り対象になるだけあって30銘柄は業績低迷企業のオンパレードだ。ゲームのネット購入が広がり、ゲームストップは2021年1月期まで3期連続で最終赤字を見込む。こうした不振企業の株価急上昇が続くのは個人投資家による典型的なバブルだ。
米証券ミラー・タバックのマシュー・マリー氏は警戒を呼びかける。「空売り銘柄の踏み上げが起きるなら、逆にレバレッジをかけて買われている銘柄に売り仕掛けが起き、買い方の投げ売りを誘う展開もありうる」と指摘する。ハイテク株にコールオプションの残高が積み上がっていた昨年9月初め、突然の売り圧力の高まりでアップルやフェイスブック、テスラなどが急落した。その二の舞いがないとは言い切れない。
銘柄名 | 浮動株に対する空売り比率 | 前日比騰落率 | 年初来騰落率 |
(1)ゲームストップ | 138.4 | 92.7 | 685.5 |
(2)リガンド・ファーマシューティカルズ | 64.2 | 0.5 | 57.7 |
(3)ベッド・バス・アンド・ビヨンド | 64.1 | 20.2 | 107.6 |
(4)ナショナル・ベバレッジ | 62.5 | 16.2 | 52.5 |
(5)フーボTV | 62.2 | 7.2 | 56.9 |
(6)AMCネットワークス | 60.2 | 10 | 67.3 |
(7)メイスリッチ | 58.4 | 12.9 | 82.4 |
(8)サンパワー | 53.6 | 13.9 | 110.3 |
(9)パブマティック | 50.8 | ▲0.5 | 34.7 |
(10)タンガー・ファクトリー・アウトレット・センターズ | 49.7 | 17.2 | 61.2 |
(11)アカデミー・スポーツ | 46.3 | 2.5 | 17.2 |
(12)アクセラレート・ダイアグノスティックス | 46.3 | ▲7.4 | 58.3 |
(13)トーツィー・ロール・インダストリーズ | 45.9 | 10.3 | 29.5 |
(14)ゴーゴー | 44.6 | 1.9 | 53.5 |
(15)ビッグコマース | 44.5 | 7.9 | 34.6 |
(16)クロビスオンコロジー | 42.8 | 3.9 | 71 |
(17)オントラック | 42.2 | 19.2 | 53.8 |
(18)コス | 41.5 | 66.7 | 190.7 |
(19)ルート | 40.2 | 4.4 | 39 |
(20)カーパーツ・ドットコム | 40.2 | 48.2 | 62.9 |
(21)エスペリオン・セラピューティクス | 40 | 8.7 | 20.4 |
(22)セリテージグロース | 40 | 11 | 22.6 |
(23)センソニックス | 39 | ▲3.7 | 225.8 |
(24)ビヨンド・ミート | 38 | 17.7 | 49.5 |
(25)ミンジューロジスティックス | 37.9 | ▲11.2 | 134.2 |
(26)チルドレンズプレース | 37.9 | ▲2.5 | 39.2 |
(27)アイロボット | 37.4 | 9.1 | 57.4 |
(28)ニコラ | 37 | 23.6 | 68 |
(29)B&Gフーズ | 36.4 | 10.4 | 35.5 |
(30)ディスカバリー | 35.3 | 4.4 | 35.3 |
※30銘柄の平均 | 49.3 | 13.8 | 87.1 |
(注)空売り比率の出所はQUICK・ファクトセット。騰落率は26日終値を前日および昨年末終値と比較した。単位は%、▲は下落