【QUICK Market Eyes 大野弘貴】QUICKが実施した1月の「QUICK短期経済観測調査(QUICK短観)」で、製造業の業況判断指数(ディフュージョン・インデックス、DI)はマイナス9と、前月調査のマイナス4から5ポイント悪化した。7カ月ぶりの下落となった。全産業(金融を含む)はプラス2と前月調査変わらずだった。
■景況感改善に一服感
2021年のリスク要因として、回答者の7割超が「ワクチンが期待ほど効果なく、新型コロナの感染がさらに拡大する」を選択した。
自社の株価が「安い」と答えた回答数から「高い」と答えた回答数を減じて算出する自社株判断DIは製造業で52と12月調査から4ポイント下落した。前月比でマイナスとなるのは20年9月調査以来、4カ月ぶり。
アナリストの業績予想についても、上方修正数の増加にやや一服感が生じた。主要企業の業績予想の変化を示すQUICKコンセンサスDIは、製造業が前月から1ポイント悪化のプラス26とわずかながら悪化した。
■製造業DIとTOPIXの関係
製造業DIは日本の株価指数動向と強い相関が観察される。下のグラフは製造業DIと東証株価指数(TOPIX)の前年同月比騰落率推移を示したものだ。
製造業DIが頭打ちになるとTOPIXの前年同月比で見た上昇率も鈍化する傾向がある。日本でも月末以降、第3四半期決算発表が本格化する。
足もとで新型コロナウイルスの感染が拡大し、企業の景況感改善に一服感が生じている。アナリストの業績予想に再度慎重な見方が広がることで、株価の上値が抑えられる可能性もありそうだ。
<金融用語>
QUICK短観とは
QUICK短観とは、正式名称はQUICK短期経済観測調査。QUICKが調査・発表している国内上場企業の景況感を示す経済指標。日本銀行が国内企業を対象に景況感を調査する「全国企業短期経済観測調査(日銀短観)」は年4回の公表だが、QUICK短観は毎月公表している。日銀短観の2週間ほど前に最新の調査結果を公表していることから、日銀短観の先行指標として利用されている。足元および先行きの業況判断について「良い」、「さほどよくない」、「悪い」の三択方式で質問し、調査結果を「DI」(Diffusion Index、ディフュージョン・インデックス)という指数にして製造業や非製造業などの分類ごとに発表する。例えば、足元の業況判断DIは3ヵ月前と比べて「良い」と回答した企業の割合から、「悪い」と回答した割合を差し引いて算出する。 景況感以外にも、自社の株価水準や円相場の水準、将来の物価見通しなどについても調査している。