【日経QUICKニュース(NQN) 中元大輔】日銀は1月29日、同20~21日に開いた金融政策決定会合の主な意見を公表した。日銀では3月会合で公表する国債買い入れなどの金融緩和策の点検に向け、現行の施策がもたらす副作用への問題意識が高まっていることが改めて浮き彫りになった。マイナス金利導入から5年を経てもなお目標達成が遠い日銀。金融緩和の長期化を見据えた政策修正に市場の注目が一段と高まる。
■関心高まる「副作用」
1月会合では「金融仲介機能や金融市場の機能度への副作用について、累積的な性質も踏まえ、改めて点検すべきだ」との意見があった。日銀は点検の主眼はあくまで効果的に2%の物価安定目標を実現することとしている。だが21日の黒田東彦総裁の記者会見でも「副作用」への言及が前回(2020年12月)時より増えており、関心が高まっている。
日銀が金融機関の当座預金の一部にマイナス金利を適用すると決め、29日で5年たつ。その後、長期金利の指標となる10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する方針も導入し、金融機関は低金利環境で収益を得にくくなった。国際通貨基金(IMF)が1月の改訂国際金融安定性報告書で「純貸出利ざやが縮小する中で銀行が資本コストを上回る収益を確保することが難しくなる」ことのいい例として日本をあげるなど、金融緩和策と安定した金融システム維持の両立は課題となっている。
■政策点検にいくつもの予想
1月会合では、長期金利が上下にある程度の範囲で変動することは「市場機能を通じて金融機関の運用ニーズを満たすことで金融システムの安定に資する」との声があった。米長期金利がバイデン新政権による大規模な財政支出観測で1%を超えた際、「国内金利の反応が鈍く、(日銀が)市場機能の低下に懸念を抱いたのでは」(大和証券の岩下真理氏)との見方は多く、市場機能の回復に向けた取り組みがカギになりそうだ。
市場では政策点検で、プラスマイナス0.2%程度としている長期金利の変動幅の拡大や、国債買い入れオペ(公開市場操作)での超長期国債を中心とした減額予想などがある。上場投資信託(ETF)の買い入れでは、年12兆円とする残高増加ペースの上限を撤廃し、柔軟な購入をしやすくするとの見方がある。