【NQNニューヨーク=張間正義】インターネット通販のアマゾン・ドット・コムが2日夕に発表した2020年10~12月期決算は、同社が新型コロナウイルス禍の最大の「受益者」であることを証明した。売上高は初の1000億ドル台に乗せ、急速に拡大するネット通販での存在感の高まりを裏付けた。もっとも、市場にとってサプライズだったのは創業者のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の退任発表だった。
■ネット通販とクラウドの両輪
10~12月期の増収率は44%だった。7~9月期(37%増)から加速し、四半期では11年7~9月期以来の大きさだった。米証券スタイフェルのスコット・デビット氏は「アマゾンは新型コロナウイルスが社会にもたらした影響の最大の受益者」と指摘する。
新型コロナで世界的にネット通販が急増。アマゾンは有料会員サービスの「プライム会員」を1億5000万人以上抱え、強固な顧客の囲い込みに成功。こうした顧客による継続したアマゾンでの購入はあたかもサブスクリプション(定額課金)収入のように業績拡大に寄与する。さらに、新型コロナは社会のデジタル化を加速させ、同社のクラウドサービスへの長期的な成長への期待を一段と高めた。
部門別売上高で最大のネット通販が市場予想を上回る伸びをみせた。一般の小売業者がアマゾンのサイトを通じて販売できる「マーケットプレイス」を含むサードパーティーや広告事業を含むその他事業も大きく伸び、在宅勤務や遠隔学習の普及が追い風となるクラウドサービス「AWS」も安定的な伸びをみせた。
サプライズだったのは決算よりも、突然のCEOの交代だ。ベゾス氏はCEOを退任して7~9月期に取締役会長に就き、後任CEOにクラウド部門を率いるアンディ・ジャシー氏が昇格する。ベゾス氏は発表資料で「現在のアマゾンはこれまでで最も独創的な状態にあり、交代に最適な時期だ」とコメントした。
■クラウドの巨人へ
ジャシー氏はアマゾンの最大の収益源に育ったAWSの立ち上げに関わり、16年以降はAWS部門のトップを務める。AWSの20年10~12月期の営業利益は35億6400万ドルと、北米のネット通販事業の29億4600万ドルを上回る。グーグルの親会社アルファベットは2日夕に発表した20年10~12月期決算で初めてクラウド事業の営業損益を開示したが、12億4300万ドルの赤字だった。クラウド市場で競合する両社だが、収益力は雲泥の差だ。米メディアは今回のCEO交代を「ネット通販企業からクラウドの巨人に変身するための布石」と異口同音に解説する
2日夕の米株式市場の時間外取引ではアマゾン株は上昇している。通常取引を前日比1.1%高の3380.00ドルで終えた後、この水準を1%程度上回って推移している。チャート上は昨年9月2日(3552.25ドル)と10月12日(3496.24ドル)を2つの頂点とするダブルトップで、その後は3000~3300ドルをレンジとして上値の重い展開が続いていた。今回の決算とCEO交代が市場に評価され見直し買いを誘えば、株価は上放れから昨年9月に付けた上場来高値を更新するのにそれほど時間はかからないだろう。