【日経QUICKニュース(NQN) 大沢一将】トヨタ自動車(7203)は2月10日、2020年10~12月期の連結決算(国際会計基準)で営業利益が前年同期比54%増の9879億円になったと発表した。「四半期で1兆円に迫る利益水準は、ちょっと見たことがないレベルだ。正直、驚いている」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリスト)との声が市場から上がる。コロナ禍からの回復局面で、トヨタは異次元の強さを見せつけた。
■期待を超える好決算
所在地別の営業利益は北米を中心に全地域で前年同期を上回った。自動車市況の回復の追い風をフルに享受した。好決算を受けてトヨタ株は前日比256円(3.2%)高の8250円まで上昇し、2015年7月以来5年半ぶりの高値を更新した。決算内容への期待感から発表前に一時2.6%高の8200円まで上げていたが、さらに上げた格好だ。
※トヨタ自動車株価と日経平均株価の相対チャート。(2020年始を100として指数化)
あわせて、今期(21年3月期)の営業利益が前期比17%減の2兆円になりそうだと発表した。従来予想の46%減の1兆3000億円から7000億円積み増すことになる大幅な上方修正となり、市場予想の平均であるQUICKコンセンサスの1兆5381億円(1月29日時点、18社)を上回った。
※トヨタ自動車の業績(21年3月期は会社予想)
米国や中国を中心に好調な自動車市況を反映し、先だって決算を発表したデンソー(6902)や豊田自動織機(6201)などのトヨタグループの主要企業は相次いで今期の業績予想を上方修正していた。トヨタへの期待値は高かったが、期待を超える好決算で応えた。
■半導体不足による減産はない
グループ総販売台数の見通しも従来の942万台から引き上げ、973万台とした。同社の近健太執行役員は決算説明会で「(世界的な半導体不足の影響によって)減産があるかというと、ない」と語った。9日に決算を発表したホンダ(7267)や日産自動車(7201)は半導体不足の影響で、今期の売上高や四輪の世界販売台数の見通しを引き下げていた。トヨタのサプライチェーンの強さが改めて意識される対照的な結果となった。
バイデン米政権が掲げる追加経済対策により現金給付などの家計向けの支援が実施されれば、米国の自動車市場は一段と活気づくとの見方もある。原価改善の努力などのコスト削減効果も出ており、市場では「今期業績はさらに上振れする余地がある」(国内証券のアナリスト)との期待も出ている。トヨタ株は高値追いが続きそうだ。