(この記事は2021年2月9日に公開したものを再構成しました)
【QUICK Money World 辰巳 華世】株式市場にとって半導体関連銘柄の動きは明暗を分けます。新型コロナショック後、日経平均株価を一時、30年ぶりの高水準となる3万円台に押し上げたのは半導体関連銘柄でした。一方、2022年以降、主要な半導体関連銘柄で構成する米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が減速トレンドに転換し、株式相場が崩れる場面もありました。しかし、23年以降、再び上昇基調のSOX指数。日本の半導体関連銘柄にも大きな影響を与えるSOX指数に注目が集まっています。
■SOX指数とは――米国の半導体株指数
SOX指数とは、米国の主要な半導体関連銘柄で構成された株価指数です。日本語ではフィラデルフィア半導体株指数と呼ばれ、全部で30銘柄で構成されています。米国のフィラデルフィア証券取引所が算出・公表し時価総額加重平均で算出されています。当初は株価の合計を銘柄数で割った単純平均で算出されていました。1993年12月1日を基準値を100(200でしたが、1995年7月24日に2対1に分割しています)として算出を開始しています。
SOX指数を見れば、米国の半導体関連銘柄の状況が分かります。半導体関連銘柄の株価が上昇するとSOX指数も高くなります。半導体業界の動向を知ることは、景気を把握するのに役立ちます。一般的に半導体業界が好調だと、景気が良いと判断される傾向があります。
SOX指数は日本株への影響も大きいので注目されています。SOX指数に日本株は採用されていませんが、SOX指数の動きは世界の半導体市況に対する市場の見方を反映しているため、日本の半導体関連銘柄の株価も上下させます。
最近の半導体市況は、高速通信規格「5G」関連向けやデジタル化に欠かせないクラウドサービス、データセンター向けの半導体と半導体製造装置の需要が急増しています。また、足元では、対話型AI(人工知能)の「ChatGPT(チャットGPT)」の登場など生成AIブームで、AIを動かすために必要な半導体の需要が急拡大しています。最近の株式関連のニュースなどでSOX指数という言葉をよく目にするのはこのためです。
半導体関連銘柄が大きなけん引役の一つとして2020年末から日経平均株価は上昇を続け、一時30年ぶりとなる3万円の大台を突破しました。ただ、2022年に入りSOX指数が低下トレンドに転換し、株式相場も崩れました。
2022年のSOX指数低迷は、世界的な半導体不足が影響していました。半導体不足は複数の要因が絡み合って起こりました。米国と中国との経済摩擦、コロナウイルスの感染拡大による新しい生活様式による需要の増加、コロナウイルス感染拡大による工場閉鎖やサプライチェーンの混乱、さらにウクライナ危機による半導体製造工程で使われるネオンガスの供給不安などです。
しかし、2023年以降、SOX指数は再び上昇しています。ChatGPTの登場でAIの進化が新たな段階に入り、AIを動かすための半導体需要が大きく伸びているためです。
SOX指数銘柄の一つである米大手半導体のエヌビディアの決算は好調に推移しています。生成AI向けの旺盛な需要を背景にした業績拡大が続いていることが確認されています。
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■SOX指数の確認方法
SOX指数を確認するには、Googleファイナンスや株式のチャートサイトで確認が可能です。ネット証券のサイトなどでは、確認できないことが多いようです。先ほど説明した様に、SOX指数は日本の半導体関連銘柄にも大きな影響を与えるので、取引が始まる前に前日のSOX指数の動向を把握するとその日の動きがある程度予測できます。
■SOX指数の構成銘柄
SOX指数は以下の30銘柄で構成されています。米インテル(INTC)、米エヌビディア(NVDA)や米ザイリンクス(XLNX)など新聞記事で目にしたことがあるかと思います。
SOX構成銘柄(2024年5月末時点) |
|
ADI | Analog Devices, Inc. |
GFS | GlobalFoundries Inc. |
ASML | ASML Holding NV ADR |
ENTG | Entegris, Inc. |
QCOM | Qualcomm Inc(クアルコム) |
TER | Teradyne, Inc. |
SWKS | Skyworks Solutions, Inc. |
AMKR | Amkor Technology, Inc. |
TXN | Texas Instruments Incorporated |
RMBS | Rambus, Inc. |
NVDA | NVIDIA Corporation(エヌビディア) |
KLAC | KLA Corporation |
AMD | Advanced Micro Devices, Inc. |
MCHP | Microchip Technology Incorporated |
MRVL | Marvell Technology Group Ltd. |
MU | Micron Technology, Inc. |
ON | ON Semiconductor Corporation |
LSCC | Lattice Semiconductor Corporation |
LRCX | Lam Research Corporation |
COHR | Coherent Corp. |
INTC | Intel Corporation(インテル) |
ALGM | Allegro MicroSystems, Inc. |
TSM | Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd. (TSMC)Sponsored ADR |
AMAT | Applied Materials, Inc.(アプライドマテリアル) |
MPWR | Monolithic Power Systems, Inc. |
ACLS | Axcelis Technologies, Inc. |
NXPI | NXP Semiconductors NV |
AVGO | Broadcom Inc.(ブロードコム) |
WOLF | Wolfspeed, Inc. |
QRVO | Qorvo, Inc. |
■SOX指数の長期推移と今後の成長
SOX指数の長期チャートを見てみましょう。2000年のIT(情報技術)バブルで一度大きく上昇していますが、ITバブル崩壊でその後暴落しています。2009年のリーマン・ショック以降、長期間上昇が続いています。特に2020年以降は、急騰していることが分かると思います。コロナショックを経て2年あまりで3倍になっています。ただ、2022年に入り減速トレンドへ転換したのち、供給問題の解消やAIブームを背景に持ち直しています。
半導体市況には、サイクルがあると言われています。半導体の業界特有の構造的な循環が影響し、一般的には4年ほどの周期で好況と不況を繰り返すと言われています。これまで周期的な変動を繰り返していた半導体市況ですが、最近のデジタル化の流れなど社会構造の変化に伴い需給サイクルの構造的変化が起こるとの見方もあります。
最近の人工知能(AI)、仮想現実(VR)、5Gなどの普及により半導体関連銘柄は今後も株価が伸びていくことが予想されています。東京応化工業(4186)、信越化学工業(4063)、富士電機(6504)など日本の半導体株にも注目が集まっています。
<関連テーマ株>:5G関連株 電気自動車関連株 パワー半導体関連株
■SOX指数を活用して取引するには?ETFは?
SOX指数を確認することで、半導体関連銘柄の状況が確認できます。SOX指数は外国株ですが、日本の半導体関連銘柄の株価にも影響を与えます。SOX指数の動向を注視すると共に、半導体関連の話題やニュースなどをチェックしながら株価の変動を予測しましょう。
SOX指数と日本の半導体関連銘柄の株価は連動する可能性が高いです。SOX指数の上昇は、日本の半導体関連銘柄の投資判断の材料の一つです。ただ、SOX指数が上昇していても、時に日本の銘柄の上昇タイミングが出遅れるケースがあるので取引する時期を考えていくことは大切です。また、SOX指数の上昇に伴い日本の半導体関連銘柄が買われている場合でも、上昇が少し出遅れている銘柄などを探し取引をしていくのも一つの方法です。
個別の半導体銘柄の売買が難しければ、ETFを活用する手もあります。東京証券取引所に上場するSOX指数に連動するETF(上場投資信託)では、グローバルX半導体ETF(2243)があります。
■まとめ
SOX指数は、半導体関連銘柄の株価動向を探るのに役立つ指標です。米国株だけでなく、日本株にも大きな影響を与える指標です。株式投資をする時にはSOX指数を確認し、投資に役立てましょう。
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