【日経QUICKニュース(NQN) 中山桂一】16日の東京株式市場で、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)株が10万円の大台に乗せ、上場来高値を更新した。最低投資金額は1000万円を超え、個人投資家にとってはますます高根の花になった。時価総額はアパレル企業で世界一だ。
■最低でも1000万円
ファストリ株は16日、前日比4.7%高の10万4100円まで上昇し、時価総額は一時11兆円を超えた。世界を見渡すと、ライバルの「ZARA」ブランドを展開するインディテックスの時価総額(15日時点、801億2900万ユーロ、日本円10兆2200億円)を超え、アパレル業界の王座についた。
※ファストリとインディテックスの時価総額(円ベース、QUICK FactSet Workstationより)
日経平均株価の構成銘柄でファストリの存在感は別格だ。ファストリの構成比率は15日時点で11.91%と最大だ。
ファストリの株価は16日に10万円を超えたため、株価の値動きの最小単位である「呼び値」が従来の10円から50円に変更になった。計算上はファストリ株が50円動くと、日経平均は1円80銭程度の影響を受ける。従来の10円の呼び値では1円程度の影響だったので、その分、振れ幅が大きくなる。
ファストリ株に投資する場合、最低でも1000万円が必要。つまり日本株のなかで最も高額な株だ。個人にとってはなかなか手が出しにくい。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「松井証券でもファストリを投資対象とする個人の絶対数は少ない」と話す。
■「投資単位の引き下げは検討していない」
市場では個人投資家の手掛けにくさなどを考慮すれば、株式を分割したり投資単位を引き下げたりすべきではないかとの声も聞かれる。一方、ある市場関係者は「構成比率の高さから、指数連動のインデックスファンドからの資金流入が見込めるため、ファストリ側に株式分割や投資単位の引き下げをする考えはないのではないか」と指摘する。
ファストリは昨年11月、「投資単位の引き下げに対する考え方及び方針について」という資料を開示。そのなかで個人投資家の株式市場への参加を促し、株式の流動性を向上させるのは上場企業の責務のひとつと指摘した。もっとも必要な流動性は十分に確保されており、投資単位の引き下げは検討していない、とも記している。
株価が10万円の大台に乗せたのでファストリに取材してみると、「投資単位の引き下げは検討していない」(コーポレート広報部)という答えが返ってきた。
ファストリは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という企業理念を掲げる。コロナ禍でもお手ごろ価格の良い服を作り、消費者の心をつかんできたが、株式市場では個人投資家の手がなかなか届かない存在になった。