【日経QUICKニュース(NQN) 永松英一郎】外国為替市場で円相場の一段安を見込む声が増えている。2月17日の東京市場では一時1ドル=106円22銭近辺と5カ月ぶりの安値を付けた。新型コロナウイルスのワクチン普及や追加経済対策が米経済の正常化を後押しするとの期待が広がり、米長期金利は上昇基調が鮮明になってきた。日米金利差の拡大を材料に円売り・ドル買いが続きそうな気配で、昨年8月以来となる1ドル=107円台が視野に入ってきた。
■米金利「コロナ前の1.5~2%まで戻す」
米国ではトランプ前大統領の弾劾問題が早期に決着し、バイデン政権は1.9兆ドルの追加経済対策の成立へ向けた動きを本格化させるとの観測が強まっている。新型コロナのワクチン接種が進み、感染者数は減少している。外為市場では「今のところ米景気回復のシナリオが揺らぐことは考えにくい」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏)との声が増えている。投資家は米国景気の先行きに自信を深めているようだ。
こうした見方が後押しし、米長期金利は上昇ピッチが加速する。16日は1.31%と昨年2月以来およそ1年ぶりの水準まで上がった。先行きについては「1.5%まで上昇する余地がある」(ソニーフィナンシャルホールディングスの石川久美子氏)、「コロナ前の1.5~2%まで戻す」(岡三証券の島野徹氏)といった見方が相次ぐ。
■日米金利差は拡大
国内の長期金利も上昇の勢いが強くなっているが、17日時点では0.1%を下回る水準にとどまる。絶対水準の違いから、日米の金利差は拡大していく。そうなれば円売り・ドル買いが強まるだろう。QUICKによると、両国の長期金利の指標となるそれぞれの10年債利回りの差は16日時点で1.228ポイントで、昨年末の0.897ポイントから拡大が続いている。
米国をはじめとする世界経済の正常化期待は、各国の株価を押し上げている。投資家が運用リスクを積極的にとる「リスクオン」のムードが続くとの観測も、円の一段安シナリオを補強している。三菱モルガンの植野氏は「目先は107円台まで下落することを想定している」と話す。