【QUICK Market Eyes 大野弘貴】QUICKが実施した2月の「QUICK短期経済観測調査(QUICK短観)」では、製造業の業況判断指数(ディフュージョン・インデックス、DI、「良い」から「悪い」を減じて算出)がプラス2と前月から11ポイント改善し、1年ぶりにプラスに転換した。3カ月後の見通しを示す「先行き」についても、製造業はプラス3と13ポイント改善し、こちらも1年ぶりにプラスに転換した。
■業況判断DIの一層の改善も?
最後に製造業の業況判断DIがマイナスからプラスに転じたのは2013年4月(製造業先行きDIは13年1月)だった。その後も製造業業況判断DIはプラス圏を維持し続け、13年4月末時点で1万3860円86銭だった日経平均株価は、15年5月に2万585円24銭をつけ約6700円上昇した。
今回調査での設問「コロナ感染拡大に対し最も望む政策」では、回答者の67%が「ワクチンの早期承認と接種開始」を選択した。2月17日には日本でも医療従事者を対象に、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。ワクチンの普及拡大に伴い、業況判断DIの一層の改善も期待できそうだ。
■日経平均に上昇余地?
自社の株価が「安い」と答えた回答数から「高い」と答えた回答数を減じて算出する自社株判断DIは製造業で50と1月調査から2ポイント下落した。2カ月連続でマイナスとなった。
最後に自社株判断DI(製造業)が50を下回ったのは18年10月だが、この当時は日経平均が2万2000円近辺で推移していた。足もとの同指数は3万円を上回っているが、自社の株価が「安い」と回答する企業数が多いことから、更なる上昇余地があると言えそうだ。
■相次ぐ業績予想の上方修正
企業業績が順調に改善しているのも心強い材料だ。日本企業の第3四半期決算では、通期業績予想を上方修正する先が相次いだ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の集計によると、製造業で会社予想経常利益を上方修正した割合は46%と、下方修正先の6%を大きく上回った。非製造業では上方修正先が27%、下方修正先は8%だった。
業績改善に伴い、PER(株価収益率)も低下している。日経平均の予想PERは17日時点で26.76倍と、1月25日時点の29.52倍より低い。なお、同時点から日経平均は17日終値まで1400円超上昇しているにも関わらずだ。利益見通しの改善に伴い、バリュエーションの再拡大余地が生まれた格好だ。
日経平均は30年半ぶりに3万円の大台を突破し、割高感も台頭しやすい状況だ。バブル期以降の高値と言うこともあり、バブル再来との警戒感もくすぶる。それでも、足もとの株価上昇は、ワクチン接種の広がりに伴う経済の正常化期待により、正当化出来うるとみなせそうだ。
<金融用語>
QUICK短観とは
QUICK短観とは、正式名称はQUICK短期経済観測調査。QUICKが調査・発表している国内上場企業の景況感を示す経済指標。日本銀行が国内企業を対象に景況感を調査する「全国企業短期経済観測調査(日銀短観)」は年4回の公表だが、QUICK短観は毎月公表している。日銀短観の2週間ほど前に最新の調査結果を公表していることから、日銀短観の先行指標として利用されている。足元および先行きの業況判断について「良い」、「さほどよくない」、「悪い」の三択方式で質問し、調査結果を「DI」(Diffusion Index、ディフュージョン・インデックス)という指数にして製造業や非製造業などの分類ごとに発表する。例えば、足元の業況判断DIは3ヵ月前と比べて「良い」と回答した企業の割合から、「悪い」と回答した割合を差し引いて算出する。 景況感以外にも、自社の株価水準や円相場の水準、将来の物価見通しなどについても調査している。