【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】歴史的な高値圏にある日本株相場。今週に入り、日経平均株価は30年半ぶりに3万円の大台を回復した。日本株を見る個人投資家の視線も熱くなりそうだが、足元で新たに生まれる「1兆円ファンド」の顔は米国株。かつての日本株のそれも輝きとはほど遠い。
■日本の投信なのに
2月に入り、アセットマネジメントOneが運用する「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」、通称「未来の世界(ESG)」の純資産残高が初めて1兆円を超えた。同投信は成長力やESG(環境・社会・企業統治)の取り組みに着目し、世界の株式に投資。1月末時点の組み入れ比率トップはアマゾン・ドット・コム(AMZN)で、7.8%だ。
1月にも、日興アセットマネジメントの「グローバル・プロスペクティブ・ファンド」(通称イノベーティブ・フューチャー)が純資産残高1兆円超えを達成。2月18日時点では1兆1071億円と、国内公募の追加型株式投資信託(ETFを除く)で最大だ。高い運用成績で注目を集める米運用会社アーク・インベストメント・マネジメントの助言をもとに投資する同投信は、電気自動車(EV)のテスラ(TSLA)の組み入れ比率が8.8%と最も高い。
かつては日本株でも、野村アセットマネジメントが2000年に設定した「ノムラ日本株戦略ファンド」が「1兆円ファンド」として注目を集めた。今回、日経平均が3万円台を回復した翌日の16日に基準価格は設定来の高さを記録。ただ、純資産残高は18日時点で544億円と、ピークの20分の1程度と隔世の感がある。
■上がれば売られる日本株
「日本株で再び『1兆円ファンド』が現れるのは難しいだろう。日本人は国内株が上がれば売り」と、日本株の元ファンドマネジャーは話す。実際、QUICKのデータによると、日本株投信は1月まで10カ月連続で資金流出超となっている。週間の東証の投資部門別株式売買動向(東京・名古屋2市場など)をみても、2月第2週(8~12日)は投資信託が1337億円の売り越し。個人投資家も4303億円を売り越している。
もちろん、日本人が日本株を信じ切れないのも無理はない。日経平均は長らく1989年12月の最高値(3万8915円)を超えられずにいるためだ。日本株が失われた年月を過ごす間に、米ダウ工業株30種平均は10倍以上になった。30年半ぶりの高値にある日本株相場だが、熱狂とほど遠いのは、長期低迷の後遺症といえるだろう。