【NQN香港=川上宗馬】香港市場で、高い運用成績で話題の米運用会社ARKインベストメント・マネジメントへの関心が高まっている。同社トップのキャシー・ウッド氏は中国や香港で「女股神(株の女神)」と呼ばれ、その恩恵にあやかろうと追随買いを入れる投資家が群がっている。運用成績は好調とあってファンドと同じ投資先への資金流入が続くが、人気の過熱ぶりに逆回転時のリスクにも警戒感が高まっている。
■ARK保有判明で株価急伸
ARKはアクティブ型の上場投資信託(ETF)を手掛け、「破壊的イノベーション」をテーマにフィンテックやヘルスケア、電気自動車(EV)などの分野に投資している。早くから米テスラ株に強気の見通しを示していたほか、2020年には旗艦ファンド「イノベーションETF」の価格が2.5倍超に上昇する高い運用成績をはじき出し、市場の話題をさらった。
中国企業への投資にも積極的で、直近ではネット医療の平安健康医療科技(@1833/HK)や決済サービスの移カ(イエイカー、@9923/HK)、ネット保険の衆安在線財産保険(@6060/HK)を買い増した。いずれの株価もARKの保有株買い増しが伝わった後に急伸し、例えば、衆安在線財産保険は16日の香港市場で前日比32%高で取引を終えた。
■続く資金流入
ただ、急速なARKの成長には警戒感もくすぶる。テスラとビットコイン関連といった連動性の高い銘柄に投資分野が集中しているほか、一部の中小型株では保有比率が高くなりすぎており、相場急落時に持ち高の調整をしにくくなっているとの指摘もある。
ウッド氏は2月のウェビナーなどでこうした懸念に対し、活況な新規株式公開(IPO)市場や特別買収目的会社(SPAC)の設立、中国を中心としたアジア市場の成長で、イノベーション企業への投資戦略を世界的に拡大する余地は十分にあると応じ、強気の姿勢を崩さなかった。
ARKの買いが投資家の追随買いを呼び、足元では高いパフォーマンスを維持する。米ブルームバーグによると、前週だけでもARKの5つのアクティブ型ETFには38億米ドルの資金が流れ込んだ。ただ、女神の神通力はいつまでも続かないことには注意が必要だろう。
■ARKが保有する主な中国企業(香港上場、チャートは年初を100として指数化)
社名 | 事業内容 |
美団(薄青線) | 出前アプリなど |
移カ(赤線) | 決済サービス |
衆安在線財産保険(黄線) | ネット保険 |
平安健康医療科技(紫線) | オンライン診療 |
テンセント(白線) | ゲームなど |
比亜迪(BYD、緑線) | 電気自動車 |
※ピンクの破線は香港ハンセン指数、テンセントとBYDは米預託証券(ADR)に投資
■ARKが保有する主な中国企業(米国上場、チャートは年初を100として指数化)
社名 | 事業内容 |
JDドットコム(赤線) | 電子商取引(EC)など |
アリババ集団(薄青線) | ECなど |
ピンドゥオドゥオ(黄線) | ECなど |
百度(青線) | 検索サービスなど |
HUYA(虎牙、白線) | ゲーム動画配信 |
貝殻找房(緑線) | 不動産売買 |
アゴラ(ピンク線) | 音声技術 |
小牛電動(紫線) | 電動スクーター |
※グレーの破線はS&P500種株価指数 4.7%