(初回公開日2022年1月20日17:00)
【QUICK Money World 辰巳 華世】世界で話題の人工知能(AI)「Chat (チャット)GPT」。この対話ソフトは、質問を入力すれば、AIが人間が書いた様な自然な文章で回答してくれる優れものです。身近な暮らしの中でAIの活用を体感する機会がだいぶ増えてきましたが、ここに来て、人工知能(AI)の進化が新たな段階に入ったのではないかと一段と注目を集めています。今回はそんなAIについて、関連銘柄が注目される理由、AI開発だけじゃない!?最新のAI事業についてや、AI関連銘柄の探し方のポイントについて紹介します。
人工知能(AI)関連の銘柄が注目される理由
人工知能(AI)とは、学習したり推論したり人間が持つ知能をコンピューターで再現することです。Artificial Intelligenceの頭文字からAIと呼ばれています。ちなみに、Artificialは日本語で人工的、Intelligenceは知能や知性などと訳されます。
AIは、経験から学び、新しい情報に柔軟に対応します。まるで人間が行う様に動きます。将棋やチェスなどをプレイする技術や、自動車の自動運転技術など幅広い分野で活用されていて、その多くはディープラーニング(深層学習)と呼ばれる自然言語処理に依存しています。
最近は少しずつ企業への導入が進み私たちの生活の中でAI技術を体感する機会が増えてきています。
例えば、飲食業界では、混雑状況の提供や無人レジ店舗での利用が増えています。ぐるなびはAIカメラにより飲食店の混雑状況を配信するサービスを開始しています。ファミリーマートは無人のコンビニエンスストアを2024年度中に国内1000店に拡大する方針です。飲食店だけでなく、金融分野でクレジットカードの不正利用検知や製造業での不良品検出、適正在庫管理など多くの分野でAI技術が活用されています。
※無人コンビニの仕組み(出所:ファミリーマートのニュースリリースより抜粋)
前々から注目されていたAIですが、2022年11月に公開されたサンフランシスコの新興OpenAIが生み出した「Chat(チャット)GPT」の登場は、今後のネット検索のあり方などを大きく変える可能性が高く話題を集めています。
これは対話型AIで、質問に答えて自然な言葉で文章を生成することができます。今までのネット検索では、キーワードから検索された結果の一覧の中から利用者が一つずつクリックして必要な情報を発見していきました。
しかし、「Chat(チャット)GPT」では、例えば「●●への3日間への旅行計画を立てて」と質問すれば、「1日目は●●を観光し、●●でランチを食べた後、●●を訪問。夜はパフォーマンスを楽しみながら●●でディナー」などと質問にぴったりとあった回答を瞬時に返すことができるそうです。
また、「Chat(チャット)GPT」では、エッセイや詩、歌や小説、コードなどを作成することができるそうです。文章だけでなく、写真、絵画、イラストなどの画像分野への広がりも考えられます。
「chat(チャット)GPT」はマイクロソフトのインターネット検索に搭載することが発表され、今後のネット検索のあり方を大きく変える可能性があると注目されています。
一方、これまで検索の分野で優位に立っていた米グーグルも、利用者の質問に自動応答する対話AIサービス「Bard」を展開する方針です。急速に広がりを見せるAIとの対話ソフトに期待も高まりますが、一方で、対話ソフトには、サイバー犯罪に悪用されるリスクなど課題もあります。
AIとの対話ソフトの様に「創るAI」の登場は今後の検索のあり方や人びとの働き方などを大きく変える可能性があります。「chat(チャット)GPT」の登場は、AIの進化が新たな段階に入ったのではないかと今後のAIがもたらす変化に注目が集まっています。
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企業での広がりを感じるAI活用ですが、日本の場合、まだ十分に活用されているとは言い難い状況があります。情報処理推進機構(IPA)が2020年2月に公表した「AI白書2020」によると、ユーザー企業525社を対象にしたAI利用実態調査ではAIを導入している企業はわずか4.2%にとどまっていることが分かりました。
一方で、経済産業省はAIの導入がこの先進んだ場合、2025年までに34兆円の経済効果があるとの試算をまとめました。特に中小企業での導入が進んでいない現状があり、中小企業だけで11兆円の経済効果を見込んでいます。
※経産省は特に中小企業でAI導入インパクトが大きいとみる(出所:経済産業省)
この様にAIの活用は今後さらに市場規模が拡大していくと予想されています。新型コロナウイルス禍の中、社会のIT化がより促進されている面もあり、AI技術に期待が高まっています。また、「Chat(チャット)GPT」などAIとの対話ソフトが広がることでAIは一段と進化をとげそうです。
人工知能(AI)関連の銘柄とは
AI関連の銘柄とされるのは、AIの開発を行っている企業やAIを活用したサービスを開始している企業などです。AI開発を行っている企業では、メンバーズ(2130)やFRONTEO(2158)があります。AIサービスを開始している企業はNECネッツエスアイ(1973)などです。AI領域のIT関連メディアなどを運営しているアイティメディア(2148)もAI関連銘柄と言えます。
人工知能(AI)関連の注目銘柄
AIの開発をしている企業では、ソフトバンクグループのZホールディングス(4689)、デジタルフォレンジック(電子鑑識)に強みがあるデータ解析のFRONTEO、デジタルビジネスを支援するメンバーズ、AIアルゴリズムを構築し、実ビジネスを展開するためのシステムを開発しているALBERT(3906)、AI開発のPKSHA Technology(パークシャテクノロジー、3993)、AIを活用した業務システム開発のシステナ(2317)などがあります。
AIを活用したサービスを開始している企業では、AI活用でプライバシーに配慮したインターネット広告を配信するサービスを始めた日本ユニシス(8056)や、ビッグデータを活用したマーケティングを手掛けるホットリンク(3680)、ビッグデータを活用した業務支援をするダブルスタンダード(3925)、AIで現場の生産性をサポートするチェンジ(3962)、AIを活用した画像解析などを展開するニューラルポケット(4056)があります。
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人工知能(AI)の開発だけじゃない!?最新のAI事業とは
AI銘柄といえば、AI開発事業やAIを活用したサービスを提供している事業などが思い浮かびます。しかし、実はAI事業は、そういった開発企業だけでなく、各企業がAIを活かしてビジネスを展開し、その結果、業績を伸ばしている部分もあります。そのため、AI事業のすそ野は広いです。AIはビジネスを展開する上で必要不可欠な技術となっており、ビジネスでのAI活用の仕方次第で、業績も大きく影響を受けます。
例えば、ネットショッピングや動画視聴などではAIで好みの製品やコンテンツを推薦する「レコメンドシステム」が業績を左右します。動画配信大手のネットフリックスは、2020年7~9月期の決算発表で視聴されたコンテンツの75%前後の大多数がレコメンドシステムをきっかけに選ばれていることを明らかにしています。
ネットフリックスでは視聴者のエンゲージメント率を高めるため、視聴者がクリックしてきたデータをベースにその視聴者の好みに合わせたコンテンツを推薦していきます。その際、そのドラマや映画の表紙であるサムネイルまでその視聴者好みに変えて表示しているそうです。全員一律の表紙ではなく、例えばそのコンテンツを象徴する場面のショットだったり、出演する俳優のアップ姿、女優の姿、美しい風景などその視聴者の好みに合わせたサムネイルに毎回変えることで視聴者の心を掴んでいます。
また、ネットフリックスではオリジナル作品のキャスティングにもAIを活用し参考にしているそうです。監督やプロデューサーなど人がキャストを選別するのではなく、今後はこれまでの膨大な視聴者のデータをもとに、視聴者により好まれる最適なキャスティングで作品を作っていく可能性が高まっています。
AIを活用することは、生産性や効率性の向上につながります。AIでは特に画像認識の技術が進んでいます。混雑状況の把握や無人店舗、異常検知に活用されています。医療分野では、理科学研究所と国立がんセンターがAIの画像認識を早期胃がんの検出に活用しています。農業分野での農薬散布に活用されたり、河川のひび割れ検知や、成田空港での出国ゲートにもAIの顔認証システムが導入されています。
この様に、AIを開発する企業に限らず、AIを活かしたビジネスを展開することが企業の成長に繋がることになります。
人工知能の関連銘柄の探し方のポイント
人工知能の関連銘柄は、開発する企業だけが対象なのではなく、AIをビジネスに活用している企業まで幅広いです。今後はますます多くの企業でAIを活用していく方向が強まります。なので独自で一つ一つ銘柄を探し出すのは時間がかかる可能性があります。最初は、AI事業を行っている企業をまとめたホームページを探したり、新聞や雑誌など幅広くアンテナを張り巡らせると良いでしょう。
まとめ
AIの開発やサービスは今後も拡大する傾向にあり、各企業でAIを活用したビジネス展開も増えていくと予想されます。AI活用で業績を伸ばす企業に注目しましょう。
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