【日経QUICKニュース(NQN)】日本とドイツの長期金利が足元で逆転している。金融情報会社のリフィニティブによると、9日時点でドイツの長期金利が日本を0.03%近く上回った。2019年5月から日本の長期金利がドイツ金利を上回って推移していたが、3日の欧州中央銀行(ECB)理事会後に反転した。日独金利の逆転は、ECBの政策姿勢の転換を象徴しているといえそうだ。
19年5月から今年1月まではドイツの長期金利はマイナス圏に沈んでいた。米中貿易摩擦を背景に欧州景気の下振れ懸念が強まり、ECBは19年9月にマイナス金利の深掘りと量的緩和の再開を決定。その後、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急措置として量的緩和を拡大した。
ドイツ金利の上昇を加速させたのは、今月3日のラガルド総裁の記者会見だ。ラガルド氏が年内利上げを排除しない姿勢を示すと、金融緩和の正常化に前向きな「タカ派」姿勢に転じたとの受け止めが広がった。市場ではECBが年内に複数回の利上げをするとの思惑も浮上。ドイツを含め欧州国債への売り圧力が強まった。
海外の金利上昇に加え、日銀の政策修正の思惑から国内債も年明けから下落基調が続いている。ただ、日銀は長期金利を0.25%程度以下に誘導する政策を採用しているため、10年債利回りの上昇は比較的緩やかなものになっている。
日銀の黒田東彦総裁は10日付の毎日新聞とのインタビューで、日本では「消費者物価が大きく上昇する可能性は極めて低い」との認識を示し「金融緩和の縮小や引き締め方向への切り替えはあり得ない」と断じた。欧州でインフレが続いてECBの利上げ観測が高まれば、長期金利を「ゼロ%程度」に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロース)を続ける日銀との姿勢の違いが鮮明になり、ドイツの10年債利回りが日本を上回る状況が定着しそうだ。