【日経QUICKニュース(NQN)】米国株式の信用取引が7月から国内で解禁される。ネット証券の一部は7月中にサービス提供を始める予定。一方、対面取引を主体とする大手は様子見だ。好パフォーマンスで人気を集めていた米株も足元は金融引き締めで変調している。信用取引によって投資機会は増えるが、リスクも高そうだ。
■保証金率は50%、日本株より基準厳しく
信用取引は自己資金以上の取引ができるしくみ。保有していない株を売ることも可能だ。通常の取引よりも大きな利益を追求できる半面、損失が拡大するリスクも高い。米株の取引には日本株の値幅制限にあたる「ストップ高」や「ストップ安」のしくみがなく、価格変動がより大きくなる可能性がある。
米株の信用取引の解禁にあたっては、日本証券業協会がルールを整備した。対象はダウ工業株30種平均やS&P500種株価指数などの指数構成銘柄をはじめ、時価総額や売買代金など一定の条件を満たす大型株およそ1300銘柄。為替の変動や流動性、取引時間の時差などを踏まえ、保証金率や追加の担保差し入れ(追い証)の発生基準となる保証金維持率は国内株式の信用取引よりも高い設定となる。
◎信用取引の条件
<日本株> <米国株>
保証金率 30% 50%
追い証発生基準 20% 30%
■SBI、楽天は7月中にスタート
米株の信用取引を始める際は、日本株の信用取引口座とは別の専用口座を開設する必要がある。日経QUICKニュース社が主要な証券会社10社に米株の信用取引の取り扱いについて聞いたところ、SBI証券と楽天証券の2社が7月中にサービスを開始する予定と答えた。いずれも取り扱う銘柄は現時点で未定。取引の手数料については他社の動向などを見極めながら判断する方向だ。
他のネット証券も2022年度中には取り扱いを始める見通し。マネックス証券は7月中のサービス開始を予定していたが、システムの整備のため22年中に延期すると7日に発表した。2月に現物の米株取引を始めたばかりの松井証券は現物取引の顧客増加に努めながら対応を進める。
◎主要ネット証券の取り扱い予定
・SBI 7月中
・楽天 7月中
・マネックス 22年内
・auカブコム 22年12月~23年2月の間
・松井 23年3月まで
■対面大手は「未定」、顧客ニーズ見極め
一方、対面大手5社はそろって信用取引サービスの取り扱いを「未定」としている。野村証券は「日本時間深夜に米株が急落した場合など、予期しない損失や追い証が生じる可能性もあり、相応にリスクの高い取引となる」と慎重な姿勢を示す。大和証券は「マスマーケティングの観点では一定のニーズが想定される」とみているが、現状は検討中という。
◎対面大手証券の取り扱い予定
・野村 すぐの取り扱いとはせず、顧客ニーズを見極め
・大和 導入の是非を検討
・みずほ 導入や開始時期を含めて引き続き検討
・SMBC日興 顧客ニーズの有無などを慎重に見極め検討
・三菱UFJ 7月からの取り扱いなし。検討状況は言及できず