債券市場関係者の間で、超長期債の利回り見通しが上昇している。QUICKが発表した6月のQUICK月次調査<債券>で、1カ月後(7月末時点)の新発20年債の利回り予想は平均で0.920%と、前月調査の0.737%から大きく上昇した。1カ月後の予想平均としては2016年1月調査以来、6年半ぶりの高水準となった。世界的に金利の上昇観測が強まるなか、国内でも日銀の指し値オペ(公開市場操作)の影響を受けにくい超長期債の利回り上昇が大きくなるとみられている。
(注)4~6月調査それぞれの1カ月後、3カ月後、6カ月後の予測利回りの平均をプロット(レポートの一部を抜粋)
他の年限でも、1カ月後の利回り見通しは上昇に転じている。新発10年債利回り予想の平均は0.243%と5月調査(0.230%)を上回り、5年債、2年債の利回り見通しも上昇した。5月調査では年初からの上昇基調が一服していた。米10年国債利回りの1カ月後予想は3.213%に上昇し、今年の調査開始以来初めて3%の大台に乗せた。
旬の話題について聞く特別質問では、日銀の金融政策や参院選の影響について聞いた。日銀は海外勢の売りによる債券先物相場の下落への対応として、先物決済時の受渡適格銘柄で最も価格が安く、先物価格と連動しやすいチーペスト銘柄(残存7年国債に当たる10年物356回債)の指し値オペを実施している。日銀の対応を評価するかどうか聞いたところ、「評価しない」が54%で「評価する」の46%を上回った。また「年度内にイールドカーブ・コントロール(YCC)の修正があると思うか」との質問には、70%が「ない」と回答した。
356回債の指し値オペを「評価しない」理由としては「市場の流動性の低下」(投信投資顧問)、「先物のヘッジ機能の低下につながる」(信託銀行)など、市場機能のさらなる低下につながるとの意見が多かった。逆に「評価する」とした理由としては「イールドカーブの歪みを是正」(生保)、「海外投機筋の動きに対抗する上では必要不可欠な手段」(証券会社)、「中央銀行への信認維持のためにはやむを得ない」(投信投資顧問)などの声が聞かれた。
7月10日投開票の参院選の結果については、与党が改選議席を維持または増やして過半数を確保するとの見方が圧倒的だった。選挙結果を受けて岸田政権がアベノミクスから離脱すると思うか聞いたところ「部分的にアベノミクスを維持する」が71%、「アベノミクスを踏襲する」が26%だった。
調査は6月28〜30日にかけて実施し、債券市場関係者120人が回答した。