【日経QUICKニュース(NQN) 長谷部博史】外国為替市場で、個人投資家の戦略が揺らいでいる。さえない内容の米指標を受けて米景気には悪化懸念が強まっており、外国為替証拠金(FX)取引を手掛ける個人投資家「ミセスワタナベ」はドル買いに及び腰になっている。前週後半に円高・ドル安が急速に進んだ場面でも、個人投資家からの相場の流れに逆らう「逆張り」の円売り・ドル買いは盛り上がらなかった。
2日の東京外国為替市場で、円は1ドル=130円40銭近辺まで上昇し、6月3日以来およそ2カ月ぶりとなる高値をつけた。7月28日発表の米実質国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナスとなるなど、米景気は後退(リセッション)局面入りが現実味を増す。米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが鈍るとの観測も重なり、短期筋主導で積み上がってきた円売り・ドル買いの持ち高を解消する動きが優勢だった。
個人投資家は、相場の流れに逆らう「逆張り」戦略をとる傾向が強い。急速に円高・ドル安が進む前週後半以降のような状況においては、円売り・ドル買いの注文が膨らんでも不思議ではない。だが、QUICKが1日に算出した7月29日時点の外国為替証拠金(FX)5社合計(週間)の建玉状況によると、円に対するドルの買い比率は70.3%と前の週末から2.1ポイント低下した。
※FX5社の建玉状況
「以前のように『ドルを買っておけば安心』という状況ではなくなった」。マネーパートナーズの武市佳史チーフアナリストはこう指摘する。セントラル短資FXの水町淳彦市場業務部長は「円相場が対ドルで上昇トレンドに変わったとみて動く個人投資家もいるのでは」と分析する。相場が円高・ドル安に傾いても、個人投資家は「逆張りの円売り・ドル買い」を貫けなくなっているようだ。
「米ドル・円」以外の通貨ペアに資金を振り向ける動きが出ているとの見方もある。QUICKのまとめによると、7月29日までの1週間の「ユーロ・円」取引の総建玉は9万235枚と前の週から0.6%増加。一方で「米ドル・円」取引は5.6%ほど減った。セントラル短資FXの水町氏は「(個人投資家の)目線が『ドル・円』から『ユーロ・円』に移っても不思議ではない」とみる。
米景気の先行きに不透明感が強いため「持ち高を一方向に傾けるか判断が付かず、恐る恐る投資する個人もいる」(セントラル短資FXの水町氏)と、個人投資家が身動きできなくなっている実情も浮かぶ。円相場はまだしばらく、米国の経済指標と利上げの動向をにらみながら不安定な動きが続くと想定される。個人投資家の戦略策定の難度は増しそうだ。