外国為替市場で、急速な円安・ドル高が一服したとの見方が広がっている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した8月の月次調査<外為>で、2022年の円の対ドル相場の安値予想を聞いたところ、1㌦=140円台の円安にはならないとの回答が60%にのぼった。円は7月に約24年ぶりの安値となる139円台に下げたが、今年中にこの安値を大きく更新することはないとみている。
水準感に加えて対ドルの円相場をどう見るか聞いたところ、「膠着相場に入った」が56%と過半を占めた。同様の質問をした6月調査では「円安トレンドは終わっていない」との回答が54%でもっとも多かったが、今回の調査では円安基調継続を予想した市場参加者の比率は37%に下がった。
日米の金利差が円の売り圧力となる状況に変化はない。米連邦準備理事会(FRB)のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、年末時点での水準を聞いたところ、「3.5~3.75%」が28%、「3.25~3.5%」が26%だった。現在の誘導目標は2.25~2.5%だ。残り3回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で合計1~1.25%程度の追加利上げが予想されている計算になる。大規模な金融緩和を維持する日銀とは金融政策の方向性の違いが鮮明で、金利差は一段の拡大が避けられない。
それでも円の対ドル相場が底入れしたとみるのは、すでに米利上げを市場が十分に織り込んだとの見方が背景にある。さらに足元では米国の景気後退リスクが意識される。米景気の落ち込みが明確になればFRBの金融引き締め姿勢が和らぐとの見方も出ている。実際、10日発表の7月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことでドルが主要通貨に対して売られ、一時1㌦=132円近辺まで円高・ドル安が進んだ。
これに対し、ニッセイ基礎研究所の窪谷浩主任研究員は「FRBはインフレ指標次第で受動的に金融引き締めを行う方針で、景気状況は考慮しないだろう」と指摘する。資源高の落ち着きや供給制約の改善はインフレの抑制に寄与するものの、一部でささやかれる来年にも利下げという観測は「行き過ぎ」で、市場の見方が是正された段階で、もう一度円安・ドル高が進む可能性があるとみている。
金融政策以外にも為替相場の変動要因には事欠かない。中でも、地政学リスクの高まりや米政治の混乱は、少なくとも短期的には円の買い材料となる公算が大きい。調査で「日米の金利差以外に年後半のドル円相場を動かす要因は何か」を聞いたところ、「米中間選挙」との回答が41%と最も多く、「日本の貿易収支」が32%で続いた。
調査は8月8~9日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者72人が回答した。