【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】米株インデックス型の投資信託の運用成績が好調だ。対象の指数となることが多いS&P500種株価指数は年初から17%下げているが、円安・ドル高によるプラス効果が大きい。13日時点では、三菱UFJ国際投信やSBIアセットマネジメントが運用するファンドの基準価格が相次いで今年の最高値を更新した。
三菱UFJ国際の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の基準価格は13日時点で2万600円。今年に入り7%上昇し、年初来高値を更新した。S&P500に連動するファンドで、これまで分配金を出してない。為替ヘッジをしないため、円安・ドル高が進むと円換算のパフォーマンスが良くなる。
三菱UFJ国際はMSCIオール・カントリーワールド・インデックスに連動する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール)」も運用しているが、こちらも好調だ。今年に入り基準価格は5%高。「eMAXIS Slim」シリーズは運用コストが低く、積み立て投資家を中心に人気がある。米株、全世界株型とも月間で数百億円規模の資金流入が続いている。
SBIアセットマネジメントが運用する「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の基準価格も今年に入り7%高。楽天投信投資顧問のCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動する「楽天・全米株式インデックス・ファンド」も6%上昇している。2本のファンドとも13日時点の基準価格は今年の最高値だ。
ニッセイ基礎研究所の前山裕亮・主任研究員は「米株が下がっても円安がプラスに働いてきたのは事実だが、これからは注意が必要だろう」と語る。足元の円相場は1ドル=143円台。年初から30円近く円安・ドル高が進んだが、このペースが続くかは不透明だからだ。
14日の東京外国為替市場では、日銀が為替介入に備えて市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施したと伝わり、円が下げ渋った。為替ヘッジなしの外国株インデックス投信の保有者にとってはうれしい円安も、通貨当局にとっては悩みのタネ。海外株が下げ続け、円安に歯止めがかかれば、運用成績は悪化に向かうことになる。