【日経QUICKニュース(NQN) 中山桂一、小松めぐみ】楽天グループ(4755)傘下の楽天証券は証券口座数の900万が視野に入ってきた。楠雄治社長は日本の投資家がインデックスの米国株投信を好む状況を「自然な流れ」と指摘する。今後は一定の資産を持つ投資家層にアプローチしていく構えだ。みずほフィナンシャルグループ(8411)傘下のみずほ証券と資本業務提携も結んだ。現状と戦略を聞いた。
――投資信託の積み立てが普及しています。米株価指数に連動したインデックス型投信に資金が集中している現状をどうみていますか。
「米国の経済や企業の成長力、現在の市場環境などを踏まえれば低コストのインデックス投信を積み立て投資するのは自然な流れであり、極めて正しい選択だろう」
「投資家によってはリスクに偏りがあるため、安定的なポートフォリオ提案による長期での運用に堪えうる資産形成を支援する必要がある。メールでのアフターフォローやオンラインセミナー開催などの働きかけをしている」
――今後の戦略を教えてください。
「現状、弊社を利用するお客さまにとって投資は生活のごく一部にすぎない。楽天グループの証券会社としてマスリテール(大衆)層に軸を置きつつ、楽天グループとのサービス連携による利便性の高いサービス提供に注力する」
「資産が1000万円以上1億円未満のアッパーマス層や準富裕層のニーズは多様だ。複雑なニーズに対して独立系金融アドバイザー(IFA)を中心に対応していく。みずほ証券との提携はサービス拡充の一助になるだろう」
――少額の積み立て投資から始めた顧客に対する次の一手は。
「日本や米国の個別株投資といった取引の裾野を広げていく。2021年末から米国株の積み立てサービスを始めた。手数料割引のクーポン発行やポイントを使って投資できる仕組みの導入により、他サービス利用につながっている」
「クレジットカードを利用した積み立て投資では、一度買い付け設定をしたら何もしない『ほったらかし投資』にするお客さまも多い。少しでも投資に興味を持ってもらうため、楽天グループのポイントを提供できる強みを生かし、ネット通販『楽天市場』でメリットが得られる施策を打っている」
「一般の少額投資非課税制度(NISA)やつみたてNISAをきっかけに投資を始めた投資家には、投資学習ができる機会を提供していく。特定のサービスを勧めるのではなく、中立の立場で勉強の機会を提供し、取り組みやすい手段で次の投資へステップアップできる手助けをする」
――IFAとの連携は今後も進めていきますか。
「証券業界のみならず保険業界など様々なバックグラウンドを持つ人材が増えつつある。お客さまの立場に立ち、長期の資産管理を重視する傾向も増え、アプローチの仕方も以前に比べて変化している」
「対面でのコンサルティングサービスは真にお客さま本位のサービスの視点で活動できる基盤を広げる。弊社でも仕組み債は厳しい基準で取り扱っていたが、取引量もさほど多くはなく昨今の情勢を考慮して取り扱いを取りやめた」
――みずほ証券との資本業務提携で、他に期待できるものはありますか。
「みずほ証券はこれまで新規株式公開(IPO)の主幹事を数多く手がけ、社債発行でも大きな存在感がある。楽天証券でのIPOや社債の取り扱い増加を見込む。富裕層や準富裕層など一定の資産を持つ方には相続・贈与といった多様なコンサルティングが必要だ。みずほFGが持つサービスを取り込み、ラインアップ拡充にも期待する」