3月期決算企業の4~9月期決算発表が続いている。一部には経営陣が記者会見に応じる企業もある。日経QUICKニュースが配信した記者会見の経営コメントを以下にまとめた。
◇郵船執行役員「物流正常化、想定より早く始まった」
日本郵船(9101)の丸山徹執行役員は4日、2022年4~9月期の決算説明会で「7~9月期の後半から物流の正常化が始まった」とし、「(想定していた下期からよりも)現実は少し早かった」と述べた。為替相場が予想より円安方向で推移したことが寄与し、通期業績の上方修正に至った。
8月中旬以降、輸送需要が減退するなかでコンテナ船のスポット運賃は下落基調となっている。「思ったより下げるスピードは速かった」という。今後は「供給量をマネージできるかが最も重要」とし、荷動きの減退にあわせたスペース調整や減便などの対応で、スポット運賃市況は安定化に向かうとの見方を示した。
◇川崎汽CFO、コンテナ船事業「消費悪化でも極端に悪くならない」
川崎汽船(9107)の鳥山幸夫最高財務責任者(CFO)は4日、2022年4~9月期の決算説明会で、コンテナ船事業に与える世界的な景気減速の影響ついて「運んでいる物は生活に必要な物。消費が多少悪くなっても、極端に悪くならないと思っている」と述べた。
一方、米国の積極的な金融引き締めによる景気下押しや、エネルギー価格の高騰による欧州経済不安などがあるとの認識を示し、「実体経済が長期的に悪くなり、消費が悪くなると、ネガティブな影響が出るのが経験則」とした。
コンテナ船需給については「4~5年後にかけて(コンテナ船の)竣工のラッシュがあり、市況へのマイナスの影響は避けられない」と話した。現時点で世界の新造船の発注残高は全コンテナ船全体に対して28~30%あるという。一時的な市況の軟化要因になり「懸命に乗り越えていくことが必要」と話した。
◇ソフトバンクの宮川社長、ペイペイなど「屋台骨を担う事業に」
ソフトバンク(SB、9434)の宮川潤一社長は、4日に開いた2022年4~9月期の決算説明会で、今期から新設するスマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」などの金融事業について「今年度は190億円の赤字の見通しだが、屋台骨を担う事業に育てていきたい」と語った。具体的にはスマホ決済「ペイペイ」とクレジットカードである「ペイペイカード」との統合を進めて成長を目指す考えを示した。「事業の黒字化は視野に入っているが、時期についてはコメントを控える」と述べた。
通信事業は通信料の値下げにより「今年度は900億円のマイナスの影響があると見込んでいるが、今年度を底に大幅に縮小する」と語った。一方、「電気代の価格高騰が事業面で負の影響が出ている。通信事業者として使う側から発電側に回らないといけないのではという議論も出てきている」と語った。
◇住友商CFO、国内の電力小売事業「調達価格上昇が利益圧迫へ」
住友商事(8053)の諸岡礼二最高財務責任者(CFO)は、4日に開いた2022年4~9月期の決算説明会で「下期は国内の電力小売事業は厳しい。電力の調達価格の上昇が利益を圧迫するだろう」と語った。モビリティや建設機械、肥料の製造販売などを手掛けるアグリビジネスといった非資源事業については「マーケットの変調などで利益が低下する可能性を含め、事業環境の先行きを慎重にみている」とも話した。
◇伊藤忠副社長「資源に頼らないポートフォリオを構築」
伊藤忠商事(8001)の鉢村剛副社長は4日に開いた2022年4~9月期の決算説明会で、景気の先行きが不透明になるなか、今後は「資源事業に頼らないポートフォリオを構築する」と語った。為替の円安による業績への影響について「税引き後利益で460億円ほどの増益効果があった」と述べた。金属や住生活、機械にプラスの影響が出たという。
◇丸紅CFO、ガビロン売却資金「今年度はいったん債務返済に」
丸紅(8002)の古谷孝之最高財務責任者(CFO)は4日、2022年4~9月期の決算説明会で、米穀物集荷・販売大手ガビロンの穀物事業の売却が完了したことについて「ドル金利が上昇するなかタイムリーにできた」と話した。回収資金の約3300億円の用途は「今年度はいったん債務返済に回し、24年度までの計画ではフリーキャッシュフローとみなして成長投資や株主還元に充てる」と述べた。
今後の株主還元の方針については、財務状況や事業環境を勘案して「利益成長に伴って増配したい」とした。
◇シャープ、経営陣の給与を削減 副社長「黒字化必達示すため」
シャープ(6753)の沖津雅浩副社長は4日、2022年4~9月期の決算説明会で、役員報酬や経営幹部の給与などを削減する考えを示した。「今期の黒字化を必達する姿勢を示すためにも、経営陣が先頭に立ってこの難局を打開する所存だ」と述べた。経営幹部の給与は22年11月から23年3月まで5~30%削減し、22年12月の賞与も減額する。
22年7~9月期の営業利益は円安の進行により前年同期比108億円押し下げられた。ベトナムやタイ、中国で生産しているためだ。液晶パネル工場運営の堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)関連は201億円の減益要因となった。
シャープは4日、23年3月期(今期)の連結純利益が前期比93%減の50億円になりそうだと発表した。32%減の500億円としていた従来見通しから下方修正した。