【日経QUICKニュース(NQN) 鈴木孝太朗、山田周吾】24日の新興企業向け市場で東証マザーズ指数は反発し、終値は前営業日比2.1%高の796.58と市場再編直後の4月6日以来およそ7カ月半ぶり高値を付けた。米長期金利の低下を背景にグロース(成長)株に物色が向かった。東証グロース市場の売買代金は5営業日連続で節目の2000億円を上回った。しかし、新興市場では年末にかけて新規株式公開(IPO)が相次ぐ。需給悪化で値崩れした1年前の記憶もよみがえる。
24日は14日の決算発表で成長性が再評価されたクラウド会計ソフトのフリー(4478)が5.1%高となったほか、東証プライムへの市場変更を明らかにしているオンライン診療を手掛けるメドレー(4480)が6.8%高となり、指数上昇をけん引した。東証グロースでは約65%にあたる321銘柄が上昇した。
東証グロースの売買代金は2065億円。節目の2000億円を上回るのは5営業日連続で市場再編後の連続記録を更新した。きょうは注目銘柄に浮上したマイクロ波化学(9227)やゲーム「メメントモリ」の配信で期待が高まるバンク・オブ・イノベーション(4393)が大商いとなった。三木証券の原口裕之氏は「金利上昇が落ち着いたため、出遅れ修正を意識した物色が向かっている」と指摘する。
もっとも、新興市場では年内の需給悪化を警戒する声も少なくない。現時点で20社以上がIPOを予定しているためだ。24日は直近に上場したベースフード(2936)が2.8%安で終え、ティムス(4891)は一時12.5%安となった。収益化が道半ばの企業には見切り売りが出ており、IPOをきっかけにした資金の好循環は見込みにくい面がある。
昨年も市場再編前の駆け込み上場で旧マザーズ市場を中心に12月だけでIPO社数が30を超えた。年明け以降に米金融引き締めと並びマザーズ指数下落の原因になったとみる市場関係者は少なくない。市場では「株価や個人の投資家心理回復は道半ばで、IPOラッシュをきっかけに相場が崩れる懸念は強い」(国内証券の情報担当者)といった声もある。足元の状況は嵐の前の一時的な盛り上がりになるかもしれない。