【日経QUICKニュース(NQN) 岡田真知子】外国為替市場で、主要通貨に対して円買いが進む素地が整いつつある。米利上げのペースが鈍るとの観測を背景に、円の売りの持ちを解消する目的の円買い・ドル売りが続く。そこへ中国での新型コロナウイルス規制を巡る混乱が重なり、円の「予期せぬ買い材料」となっているとの指摘がある。
■中国景気の悪化危惧
「きょうのテーマは中国リスクだ」。ある国内銀行の為替ディーラーは、こう話す。中国では27日、新たに確認された新型コロナウイルス感染者が4万人超と、過去最多を更新した。同国では感染を徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策を政府が続けている。これに対して中国各地で抗議活動が広がり、一部では混乱が起きている。
「抗議活動が広がるほど、政府は態度を硬化させて騒動を抑え込もうとする。かえって規制強化につながるなど、景気が一段と悪化する可能性さえ危惧され始めている」と、前出の為替ディーラーは解説する。
28日の東京市場で円相場は1ドル=139円台前半と、前週末に比べて50銭程度の円高・ドル安水準で始まった。その雰囲気が変わり始めたのは日本時間10時すぎ。香港や中国・上海の株式相場が下落して始まると円買いが増え、11時半ごろには138円35銭近辺まで上昇。夕方には137円台半ばまで買われ、8月下旬以来およそ3か月ぶりの高値を付けた。市場参加者がリスク回避姿勢を強めるにつれ、低リスク通貨とされる円やドルが買われた。28日午前の取引で米長期金利が水準を切り下げると、円はドルに対しても買い優勢となった。
感染拡大や国内混乱の影響から中国景気の先行きには懸念が強まり、日本時間28日の取引でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物の期近物は一時1バレル73ドル台と、期近物として21年12月以来の安値を付けた。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「原油価格の下落は日本の貿易赤字の縮小につながる。リスクセンチメント面でも、貿易収支面でも、中国リスクは円高を誘引しやすい材料だ」とみる。
■水準変わる局面は2つ
「チャート分析の側面からも、円はドルに対して強含み140円より円高の水準に定着する段階にあるようだ」(三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリスト)との指摘もある。様々な材料を見渡すと、年初からここまで主要通貨に対して売られる局面が多かった円だが、足元では買いが進む素地が整いつつあるようにみえる。
ニッセイ基礎研の上野氏は「年内に円相場の水準が大きく変わりうる局面があと2回ある」と予想する。1回目は12月2日の11月の米雇用統計の発表。そして13~14日に予定される11月の米消費者物価指数(CPI)と12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果だ。2度のタイミングで米インフレのピークアウトや利上げの減速が示唆されれば、年内に一気に主要通貨に対して円高が進む可能性もある。