【日経QUICKニュース(NQN) 小松めぐみ】ウェルプレイド・ライゼスト(ウェルライ、9565)が30日、東証グロース市場に上場した。ゲームで対戦する競技「eスポーツ」を専業とする企業の新規株式公開(IPO)は国内で初めて。拡大が見込まれるeスポーツ市場に新風を吹き込むか。市場の視線は熱い。
■eスポーツの大会運営、選手の活動も支援
eスポーツはビデオゲームを使って戦う競技だ。シューティングや格闘、スポーツといった種目を個人やチームで競う。プロゲーマーの対戦を会場で観戦したり、「ユーチューブ」の動画配信で技を学んだりといろいろな楽しみ方がある。
ウェルライはeスポーツの大会やイベントを企画・運営する「クライアントワーク」と、eスポーツ選手や実況者などの紹介・マネジメントの「パートナーソリューション」の2つのサービスを手がける。
ウェルライの谷田優也代表取締役=写真=は「多様な企業や団体と協業するなどeスポーツを活用した新規市場の開拓も進めており、事業領域の広さや独自性が他社にはない強みだ」と話す。
主力サービスのクライアントワークは、2021年10月期に売り上げ全体の約8割を稼ぎ出した。イベントを主催するゲームメーカーなどから受け取る制作費やスポンサー費用が収入源だ。委託料や紹介料の一部が収益となるパートナーソリューションよりも「粗利益率が高い」と、村田光至朗取締役管理本部長は説明する。
<直近の業績> | ||
21年11月~22年7月期 | 21年10月期 | |
売上高 | 13億円 | 16億円 |
営業利益 | 7800万円 | 1億2800万円 |
純利益 | 5500万円 | 8200万円 |
■市場規模は25年に2.3倍に
業界団体の日本eスポーツ連合(JeSU)によると、国内eスポーツの市場規模は21年の78.4億円から25年には2.3倍の約180億円に拡大する見通し。若者世代の消費文化に詳しいニッセイ基礎研究所の広瀬涼氏は「ユーチューバーがそうだったように、プロゲーマーや配信者も今後、世の中に浸透していくだろう」とみる。
ウェルライはeスポーツ市場の成長とともに収益を伸ばす考え。業務の効率化や習熟度の向上でイベントの収益率を上げるほか、企業とのつながりを深めながら手がける案件を増やす方針で、上場による調達資金はプロデューサーなどの人材確保に充てる。
■成長ストーリーに死角は? 経営陣に聞く
――業績の下振れ要因として何がありますか。
村田氏「景気が悪くなると企業が広告費やプロモーション費用を減らす懸念があり、売り上げの減少につながる可能性がある。いろいろな種類のゲームがあるが、なかには世界情勢や時世によっては印象が悪くみられてしまうものもある。その場合はスポンサーが付きにくくなる恐れがある」
――所属するプロゲーマーなどの独立や移籍は業績に影響しますか。
谷田氏「独立したり移籍したりしてもビジネスとしてつながるスキーム(枠組み)にしている。ウェルライとの契約でゲームメーカーの公認配信者になれるといった保険のような仕組みを取り入れている。ウェルライが制作するコンテンツの実況や解説を目的に所属を希望する人も多い」
【市場の目】
谷田氏は上場をきっかけに「eスポーツの価値を引き上げていく」と意気込む。市場からは「eスポーツ企業のIPOは初めてで、個人投資家の関心が集まりやすい」(東海東京調査センターの沢田遼太郎シニアアナリスト)との声が聞かれる。ウェルライの上場はeスポーツ市場にとっても大きな意味を持つことになりそうだ。
【上場データ】
2015年設立。カヤック(グロース、3904)の子会社。22年に「PUBG JAPAN CHAMPIONSHIP」の大会運営や「京都eスポーツサミット 2022 Spring」の配信業務を手がけた。プロゲーマーのネモ氏やeスポーツキャスターの水上侑氏が所属する。
・公開価格 | 1170円 |
・公募株式数 | 20万株 |
・売り出し株式数 | 23万1500株 |
(オーバーアロットメントによる売り出し6万4700株) | |
・公開価格に基づく時価総額 | 約31億円 |