【NQNニューヨーク=川内資子、横内理恵、三輪恭久】
■セールスフォースが7%安 傘下スラックのCEO退任を嫌気
5日の米株式市場で顧客情報管理のセールスフォース(CRM)が大幅に3日続落し、前週末比7.4%安の133.93ドルで通常取引を終えた。5日、傘下のビジネス対話アプリを手掛けるスラック・テクノロジーズの創業者のスチュワート・バターフィールド最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。前週にはセールスフォースの共同CEOの退任を発表しており、事業を巡る先行き不透明感から売りが膨らんだ。
バターフィールド氏の退社を米メディアのビジネスインサイダーが5日に報じ、セールスフォースの広報担当者が事実だと確認した。退社時期は2023年1月とされる。報道によると、同氏は従業員向けのメッセージで今後について「起業家的なことをするつもりはない」として、家族との時間を過ごすためと説明した。後任にはスラックのクラウド事業の責任者のリディアン・ジョーンズ氏が就く。
21年に成立した277億ドルでのスラック買収はセールスフォースにとって過去最大の買収だった。セールスフォースは11月30日、この買収を主導したブレット・テイラー共同CEOが23年1月末に退社すると発表している。景気が減速に向かい、事業拡大に向けた道筋が描きにくくなるとの懸念を誘った。
■VFコーポが急落 今期見通し下方修正、CEO退任も発表
5日の米株式市場で「バンズ」などのアパレルを手掛けるVFコーポレーション(VFC)が大幅に続落し、前週末比11.2%安の29.51ドルで通常取引を終えた。同日に2023年3月期通期の業績見通しの下方修正を発表し、調整後の1株利益の予想を従来の2.4~2.5ドルから2.0~2.2ドルに引き下げた。QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(2.41ドル)も下回り、嫌気した売りが出た。
23年3月期の売上高見通しは為替変動の影響を除き前期比3~4%増と、従来予想の5~6%増から下げた。北米を中心に需要が想定を下回り、販売促進の費用がかさんだほか、在庫調整のために卸売り向けの注文がキャンセルされたことなどが響いた。高インフレで欧州域内で裁量的な支出が減っていることや中国で新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響も想定より大きくなると見込む。
VFは5日に会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)を務めたスティーブ・ランドル氏の退任も発表した。当面は2人の取締役が暫定的に職務にあたり、後継の社長選びを始めたという。
■テスラが6%安、上海工場での生産縮小を計画との報道で
5日午前の米株式市場で電気自動車(EV)のテスラ(TSLA)が大幅反落し、一時は前週末比5.7%安の183.8ドルを付けた。ブルームバーグ通信が5日に中国・上海工場での生産縮小を計画していると報じ、同国での需要鈍化への懸念が強まった。
関係者によるとテスラは今週にも減産を開始し、上海工場の最大生産台数から2割近く減らす可能性があるという。テスラは同工場で多目的スポーツ車(SUV)「モデルY」と小型車「モデル3」を生産し、欧州などにも輸出している。
中国EVメーカーとの価格競争の激化から中国で10月に値下げに踏み切っていた。5日には11月の中国でのEV出荷台数が過去最大の10万291台だったことが明らかになったが、受注から出荷までの日数が大幅に縮小しており、需要が供給を下回り始めた兆候があるという。
今年3~4月には新型コロナウイルスの感染拡大を受けて同工場の稼働を一時停止していた。
■クレディ・スイスが続伸 投資銀行部門にサウジ皇太子が出資検討か
5日の米株式市場でスイス金融大手のクレディ・スイス・グループ(CS)の米預託証券(ADR)が続伸し、一時は前週末比6.5%高の3.60ドルを付けた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが4日、「サウジアラビアのサルマン皇太子や米ファンドがクレディ・スイスの(分社化される)投資銀行部門に出資を検討している」と報じた。経営再建策の進展を好感した買いが入っている。
報道によると、サウジ皇太子が5億ドル程度の出資を検討しているほか、英バークレイズの最高経営責任者(CEO)を務めたボブ・ダイヤモンド氏率いるプライベート・エクイティ・ファンドを含む投資家が出資を検討しているようだ。総額は10億ドルかそれ以上となるという。
クレディ・スイスは投資銀行部門の不振などで経営が悪化。2022年7~9月期まで4四半期連続の最終赤字となり、10月下旬には資本増強や投資銀行部門の分社などの再建策を公表していた。ただ、顧客離れが続く中で経営環境が一段と悪化。ADRは12月1日に3ドルを割り込む場面があった。クレディ・スイスのリーマン会長が2日に顧客の資金流出がほぼ止まったと語り、同日のADR価格は9%超上昇していた。