2023年の外国為替市場について専門家の見方が割れている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した12月の月次調査<外為>で、市場関係者に23年の米ドル、ユーロ、日本円の強弱関係を聞いたところ「ドル>ユーロ>円」を選んだ回答者が30%、正反対となる「円>ユーロ>ドル」が29%と拮抗した。
22年は日米の金融政策の差から円安・ドル高の方向感が明確だった。来年は政策当局の動きが読みにくく、現時点で市場関係者の統一見解がない状態だ。
最大の不透明要因は日銀の動向になる。日銀が膸年 に現行の金融緩和を修正すると思うか聞いたところ、62%が政策修正を予想していると答えた。特に黒田東彦日銀総裁が任期を終える直後の4~6月に、現行の金融政策を何らかの形で修正するとの見立てが多い。
農林中金総合研究所の南武志氏は「日銀が遅かれ早かれ政策修正に動くこと自体は共通見解」と話す。ただ南氏自身は修正するのは24年以降になるとみる。総裁が交代する時期に景気悪化も見込まれるためだ。
来年中の政策変更を予想する専門家の間でも、内容については見方が分かれる。微修正にとどまるのか、それとも長短金利操作など政策の根幹にかかわるような変更が行われるかで、外為市場への影響は異なってくる。このため、現時点では円相場の見方は定まりにくい。
22年に大幅利上げを繰り返してきた米連邦準備理事会(FRB)については、金融引き締めの縮小・停止に動くとの見方で一致している。調査ではFRBの利上げの打ち止め時期は「23年1~3月」との予想が46%と最も多かった。次点の「4~6月」と合わせると、8割が来年前半にFRBが利上げを停止すると予想している。
しかし、米国でも波乱の芽は見え隠れする。米金融政策を左右する世界的な高インフレについて、いつ市場のテーマから外れるかを聞いたところ「24年以降」との回答が33%だった。「23年10~12月」を合わせると50%を超え、半数以上が来年いっぱいはインフレ動向に右往左往する相場が続くと想定している。農林中金総研の南氏は、「インフレ対応としての米国の利上げが十分か、まだ足りないのかの見方が市場関係者の間で分かれ、円・ドルの相場観の違いにつながっている」と話す。
外為市場で23年に最も注目されるテーマとしては「米国の金融政策」が圧倒的な票を獲得したが、日銀の金融政策も2番目の注目を集めた。方法は分からずとも、日銀がついに動き出すだろうという思惑が市場で根強いことがうかがえる。
調査は12月5~7日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者77人が回答した。