【NQNニューヨーク=横内理恵、川内資子、三輪恭久】
■リヴィアンが続落、独メルセデス・ベンツとの生産提携を中断
12日の米株式市場で新興電気自動車(EV)メーカーのリヴィアン・オートモーティブ(RIVN)が続落し、前週末比6.2%安の25.61ドルで終えた。独メルセデス・ベンツと提携して欧州で電動バンを生産する計画を中断したと発表した。欧州市場参入による収益拡大期待が後退した。
既存の乗用車や電動バン事業に注力することが「企業価値を最大化するうえで短期的には最適な選択肢になる」と説明した。供給制約に加えて景気減速やインフレも逆風となるなか、米国での増産などに経営資源を集中する。
リヴィアンとメルセデスは9月に電動バンの生産で提携すると発表していた。実現すれば、欧州市場参入への足がかりとなる予定だった。
■マイクロソフト3%高、ロンドン証取に出資しクラウドサービス提供
12日の米株式市場でソフトウエアのマイクロソフト(MSFT)が反発し、前週末比2.9%高の252.51ドルで通常取引を終えた。ロンドン証券取引所グループ(LSEG)と資本・業務提携すると12日に発表した。マイクロソフトがLSEGの発行済み株式の約4%を取得し、データインフラの構築やデータ分析のためにクラウドサービスを提供する。クラウド事業の成長に寄与するとの見方から、買いが入った。
契約では、LSEGがデータ基盤や技術インフラをマイクロソフトのクラウドサービス「アジュール」に移管する。マイクロソフトは今後10年の間にLSEGがクラウド関連で支出する費用のうち28億ドル以上を対価として受け取る。
ウェドブッシュ証券は12日付のリポートで「提携による追加的な支出があれば、マイクロソフトの向こう10年間の売上高を50億ドルほど押し上げる」との見方を示した。各取引所がクラウドサービスへの移管を進めており「システムの自社運用は特定の用途に限られ、IT(情報技術)のクラウド化が進むという当社の見方に一致した動き」と指摘した。
■バイオ製薬のホライゾンが15%高、アムジェンが280億ドルで買収
12日午前の米株式市場でアイルランドのバイオ製薬ホライゾン・セラピューティクス(HZNP)が急伸し、一時は前週末比14.9%高の111.75ドルを付けた。12日にバイオ製薬のアムジェンによる買収で合意したと発表し、1株あたりの買収価格にさや寄せした。
アムジェンの子会社が全額現金で買収する。買収総額は約280億ドル。1株あたりの買収価格は116.50ドルと、ホライゾン株の9日終値を19.7%上回る。ホライゾンは希少疾患向けの特殊医薬品を開発しており、甲状腺眼症(TED)治療薬の販売などが伸びている。製薬業界では高価格の希少疾患治療薬の販売を強化する傾向があり、アムジェンは10月にも自己免疫疾患薬などを手掛けるバイオ製薬企業の買収手続きを完了していた。
ホライゾンは11月末にアムジェンの他にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)や仏サノフィなどから買収提案を受け、協議していることを明らかにしていた。株価は発表以降に2割上昇していた。
■クーパ・ソフトが急騰、トーマ・ブラボーが80億ドルで買収
12日の米株式市場で費用管理のクーパ・ソフトウエア(COUP)株が急反発し、一時は前週末比26.9%高の78.79ドルを付けた。12日にハイテク分野に強い投資会社トーマ・ブラボーによる買収で合意したと発表した。1株あたりの買収価格である81ドルにさや寄せする形で買いが優勢となった。
買収は全額現金で実施し、2023年前半の完了を目指す。企業価値は80億ドルと評価した。クーパは発表資料で「取締役会は現状のマクロ経済環境で、独立した会社を保つ場合と比べて会社を売却した方がリスク調整後のリターン面で優れていると判断した」と指摘した。
クーパ買収を巡っては、ブルームバーグ通信が11月23日に「投資会社ビスタ・エクイティ・パートナーズが買収を検討している」と報道。トーマの買収条件がビスタを上回ったとみられる。
クーパは新型コロナウイルス禍の在宅勤務の普及を追い風に急成長したが、成長鈍化の懸念から今年の株価は前週末までに6割下げていた。
トーマはハイテク分野に強い投資会社。ソフトウエアに特化した324億ドルの買収ファンドを設立したと7日に発表していた。今年に入ってのハイテク株の下落で買収の好機とみているようだ。