【NQNニューヨーク=三輪恭久、古江敦子、戸部実華】
■アップルが1年半ぶり安値 iPhone供給懸念が続くとの見方
28日の米株式市場でスマートフォンのアップルが4日続落し、前日比3.1%安の126.04ドルで通常取引を終えた。一時は125.87ドルと昨年6月以来、1年半ぶりの安値を付けた。主力製品の「iPhone(アイフォーン)」の生産拠点がある中国で新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、生産への影響が長続きするとの懸念が強まった。
台湾の調査会社トレンドフォースは28日にiPhoneの出荷見通しを引き下げたと発表。2023年1~3月は4700万台と、前年同時期に比べ22%減ると見込む。生産を請け負う台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)の工場(河南省鄭州市)で稼働率が低迷していることなどを反映したという。
香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは28日に「フォックスコンが3月下旬まで働く意向のある従業員に5000元のボーナスを支給する」と報じた。フォックスコンの鄭州工場を巡っては、10月以降に従業員の流出や抗議活動などが起きていると報じられていた。フル稼働に回復していないため、従業員の確保やつなぎ留めに難航しているとの見方につながっている。
■サウスウエスト航空が連日の大幅安、運航方式に疑念広がる
28日の米株式市場で空運のサウスウエスト航空が続落し、前日比5.2%安の32.19ドルで通常取引を終えた。クリスマス前後に米国を襲った大寒波の影響による運航計画の乱れが同業他社と比べて際立っており、米運輸省は調査に踏み切る方針を26日に明らかにした。遅延や欠航の長期化による業績下振れや規制強化などを警戒した売りが続いた。
米航空情報サイト「フライトアウェア」によると、サウスウエストは28日に2500便以上が欠航となった。連日で大幅な欠航や遅れが続き、29日も2300便以上の欠航を予定しているという。ブティジェッジ米運輸長官は28日の米ABCの番組で「天候による問題といえる限度を超えている」と指摘し、サウスウエストのシステム不備が根底にあるとの見方を示した。
複数の米メディアによると、人手不足や古いシステムなどが欠航の多さや回復の遅れの要因になったという。同業他社のようにハブ空港を拠点にせず、目的地から次の目的地へとつなぐ運航方式も機材や人員が足止めを食らいやすく、回復を難しくしているという。
カウエンのアナリストは「今回の寒波の影響を業界内で最も受け、収益は通常の悪天候時以上に打撃を受けるだろう」と指摘した。
■テスラが8日ぶり反発、PER20倍割れで割高感が低下
28日の米株式市場で電気自動車のテスラが8営業日ぶりに反発し、一時は前日比6.6%高の116.27ドルを付けた。大幅な下げが続いた後で、値ごろ感があるとみた買いが支えとなっている。キャシー・ウッド氏が率いるアーク・インベストメント・マネジメントが買い増したとの報道も投資家心理の改善につながったとみられる。
複数の報道によると、アークは27日までに約2万5000株のテスラ株を買い増した。今月は累計で13万株ほど増えたという。テスラは株価指標面の割高感が急速に低下しており、一部の個人投資家による買い意欲が強いとの見方もある。QUICK・ファクトセットによると、27日終値時点でテスラの予想PER(株価収益率)は19.4倍。過去5年間の平均では100倍を超えていた。
テスラ株は27日時点で前月末に比べ44%下落。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数の9.7%安に比べ大きく下がっていた。最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が、買収したツイッターの経営に労力を奪われ、テスラの経営に注力できなくなっているとの懸念が浮上。中国や米国など主力市場での需要停滞の観測も重なって、売りが続いていた。
■JDなど中国ADRが大幅安、コロナ感染の深刻化を警戒
28日の米株式市場で中国の米預託証券(ADR)が売られ、電子商取引の京東集団(JDドットコム)は一時6.3%安の55.11ドルをつけた。同業のピンドゥオドゥオは7.5%安、検索サイトの百度(バイドゥ)は5.7%安となる場面があった。中国で新型コロナウイルス感染が深刻化していると伝わり、同国経済の正常化が遅れるとの懸念が再燃した。中国政府によるコロナ規制の追加緩和策をうけて前日に大幅高となった反動もあり、売りに押されている。
中国では新型コロナの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策の緩和を発表した7日以降、感染が急拡大している。ロイター通信は28日、中国本土でコロナ感染による新たな死者が27日に3人確認されたことや医療体制の逼迫、コロナ感染拡大を受けた葬儀場の混乱を報じた。ニューヨーク・タイムズも同様に主要都市での医師や病床の不足を伝え、規制緩和以降の死者数の統計の不透明さを指摘した。
中国政府は26日に入国者の強制隔離の撤廃などを発表し、市場では経済再開に伴い同国企業の業績が改善に向かうとの期待が高まっていた。だが、28日は人やモノの移動が正常化するには時間がかかるとの見方が改めて広がり、中国ADRを押し下げた。