【日経QUICKニュース(NQN) 鈴木孝太朗】昨年末の日銀による実質利上げをきっかけに風向きが変わり始めた日本株。日銀の一段の政策修正に対する思惑は根強く、過去10年に及ぶ大規模緩和が支えてきたアベノミクス相場は正念場を迎えている。日経平均株価は、アベノミクス相場が始まった2012年11月の安値を起点とした長期のトレンドライン(アベノミクスライン)上で推移しており、日銀の政策修正が一段と進めば、明確に割り込む可能性が高まる。
アベノミクスラインは過去10年にわたり、日経平均の急落局面での安値をつないだ長期のトレンド線だ。具体的には16年6月の英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)決定、18年12月の米国の量的引き締め(QT)などで急落した場面に当たる。アベノミクスラインは長期の下値支持として注目されてきた。
20年3月の新型コロナショックでは一時的に大きく下回ったが、その後は短期間で長期トレンドに回帰した。直近では米連邦準備理事会(FRB)がインフレ対応の利上げを開始した昨年3月の急落場面でも、下値支持として機能した。
ただ、足元ではアベノミクスラインを支えてきた日銀の大規模緩和に対し、岸田政権は距離を置き始めたとの見方も浮上。市場では岸田政権の経済財政政策「キシダノミクス」は「機動的な増税」、「大胆な金融引き締め」、「規制強化」と株式市場にとって逆風になると警戒する声もあがる。
SMBC日興証券の吉野豊チーフテクニカルアナリストは「昨年12月以降の下落でチャート上のバランスが悪くなっている点は気掛かり」と話す。アベノミクスラインを死守できるかどうかに市場の関心が一段と高まる。