【NQNロンドン=菊池亜矢】欧州の高級ブランド銘柄が好調だ。中国政府が新型コロナウイルスの感染を封じ込める「ゼロコロナ」政策を事実上終了。経済活動の再開に伴うリベンジ消費が一気に表面化するとの期待が株価を押し上げている。インフレ減速の兆候から欧米中央銀行の金融引き締め終了が近いとの見方も支えだ。
フランスの株式市場では「ルイ・ヴィトン」や「セリーヌ」などを持つ仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは52週高値を連日で更新し、1月13日終値が昨年末に比べ16%上昇した。このほか、「グッチ」などを持つケリングが19%、エルメス・インターナショナルは14%高といずれも、2ケタに達する。仏株価指数CAC40の8%を上回っている。
※LVMH(ピンク)、ケリング(緑)、エルメス・インターナショナル(オレンジ)、フィナンシエール・リシュモン(水色)の株価とCAC40(白、点線)の相対チャート。(2022年末を100として指数化)
ほかの欧州市場では、「カルティエ」などを持つスイスのフィナンシエール・リシュモンが15%高。イタリアの自動車大手フェラーリや同業の独ポルシェ、高級ダウンジャケットで有名なアパレルの伊モンクレール、時計のスウォッチ・グループも上昇が鮮明になっている。
中国は22年末ごろにかけて「ゼロコロナ」政策の緩和へかじを切った。年が明けた8日には中国本土への入国者の強制隔離を撤廃し、ゼロコロナ政策を事実上終了させた。感染者数が急増する中国からの入国者増に対しては水際対策を強化する国が増えているが、本土と香港の往来でも隔離措置がなくなり、域内消費が活性化するとの観測がある。
高級ブランド銘柄が活気づくのは、中国市場への依存が高いからだ。QUICK・ファクトセットによると、地域別の売上高で中国が最も多いのはモンクレールやリシュモン、スウォッチ。約4割を占めるスウォッチは12日に株価が一時300スイスフランを上回り、約1年ぶりの高値を付けた。
欧米のインフレ進行が落ち着きつつあることも、投資家心理を支えているが、これまでの金融引き締めの影響は今後、本格化する可能性が高い。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は年明けに「世界経済の3割が景気後退の状態になると予測している」とインタビューに答えた。世界銀行も10日、23年の世界経済成長率見通しを引き下げた。
英HSBCは高級ブランド銘柄では中国の国内旅行の再開による高級品消費の寄与が高まる可能性があると指摘。一方で、「(高級ブランドを擁する)ラグジュアリー株は国内総生産(GDP)成長率と強い相関関係を持つ循環セクター。需要の基調的な減速と消費者の比較の目線が厳しくなっていることから、成長は抑制的になる」と慎重な姿勢を示している。