【NQNロンドン=菊池亜矢】オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディング株が堅調だ。アムステルダム市場では2023年初から27日までの上昇率が23%。26日には一時629.30ユーロと、約10カ月ぶりの高値を付けた。半導体市場の先行きになお警戒が残るなかで、ASMLは受注残高を着実に積み上げることで市場の懸念を抑えている。
25日発表した22年10~12月期決算は、売上高が前年同期比29%増の64億3020万ユーロと、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(28%増の63億7580万ユーロ)を上回った。純利益は2%増の18億1650万ユーロだった。極端紫外線(EUV)露光装置などシステムの売り上げに加え、アフターサービスやパーツなどインストールベース事業の売り上げも好調だった。
23年12月期通期の見通しについては売上高が前期比25%以上増え、売上総利益率が前期(50.5%)から若干改善するとの見方を示す。22年12月期通期の売上高が前の期に比べ14%増だったのに比べ、伸びが再び加速する見込みだ。
ピーター・ウェニンク最高経営責任者(CEO)は決算説明会で半導体市場について「スマートフォンやパソコン(PC)など消費者関連の需要が減り、データセンター分野の成長率も低下しているが、自動車など産業分野では依然強い需要がみられる」と指摘。中国経済の回復にも触れ「23年後半に半導体の生産が回復することを後押しする」との見通しを示した。
半導体市場が変調するなかでも、製造装置の受注は依然好調だ。22年10~12月期の新規受注額は63億1600万ユーロと前年同期から10%ほど減ったものの、22年通年では306億7400万ユーロと前の年から17%積み上がった。受注残高は記録的な水準となっており、ロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は「22年末の残高は404億ユーロと、21年末比67%増えた」という。
「需要は当社の生産能力を上回っており、注力するのはシステムの生産量を最大化することだ」。ウェニンクCEOはこう語り、将来の需要に応えるために積極的な生産能力の増強を進める方針を示した。市場には「経営陣のコメントから中長期的な成長に対する確信が損なわれていないことは明らかだ」(欧州系銀行)との期待がある。半導体製造装置での圧倒的な優位は変わらず、株価は堅調さを維持する公算が大きい。