【NQNロンドン=菊池亜矢】蒸留酒最大手の英ディアジオの株価が軟調だ。2月6日終値は3561.500ペンスと、2022年4月に付けた52週高値を12%下回る。売り上げ構成比が最も高い北米での収益に減速感が出ており、成長に陰りが出るとの警戒感が強まっているためだ。
ウイスキーの「ジョニー・ウォーカー」やジンの「タンカレー」など蒸留酒を製造・販売する。1月26日に発表した22年7~12月期決算は、売上高が94億2000万ポンドと既存の経営資源を活用したオーガニックベースで前年同期比9%増えた。純利益は17%増の22億9500万ポンド。値上げが寄与したほか、高価格帯の商品が好調で売り上げ増をけん引した。
ディアジオの決算は増収増益だったものの、市場参加者が注目したのは北米市場の急減速だった。上半期の地域別売上高は北米が37%を占め、欧州(21%)やアジア(20%)を上回る。だが、オーガニックの増収率は北米が3%と、前年同期の13%から落ち込んだ。欧州の10%、アジアの17%と比べても弱く、決算発表後に株価は前の日から約6%下落した。
新型コロナウイルス禍では自宅需要が成長を引っ張ってきたが、足元では北米市場の成長が鈍ってきた。高インフレと金利の上昇で、消費者の財布のひもが緩みにくくなってきた可能性がある。「中国の需要に期待する向きはあるがコロナ前の水準に戻る確証はない。米国で生活費が圧迫されるにつれ、消費者が商品購入に慎重になるリスクは依然残っている」(英金融サービスのハーグリーブス・ランズダウン)とみる。株価は決算発表後の下げが大きかっただけに持ち直しているものの、積極的な買いは入りにくい展開が続きそうだ。