【NQNロンドン=菊池亜矢】ドイツ金融大手ドイツ銀行の株価が下落基調にある。24日には一時7.945ユーロまで下げ、2022年10月以来5カ月ぶりの安値を付けた。債務不履行(デフォルト)のリスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、同社の保証料率の急上昇が投資家心理を冷やした。金融システム不安を巡る不透明感が根強いなかで、株価は軟調な推移が続きそうだ。
米国のシリコンバレーバンクが経営破綻した10日を境に、ドイツ銀株は下げ足を速めていたが、急落のきっかけは24日に2028年満期の劣後債の早期償還を決めたと発表したことだ。市場参加者が想定外の早期償還に驚くなかで、CDSの急上昇が混乱に拍車をかけ、株価の急落につながった。
もっとも、市場では「皆が疑問に思っているのは、ドイツ銀行に本当に問題があるのかということだ」(オアンダのエドワード・モヤ氏)との見方がある。劣後債の早期償還は、通常は自己資本の厚さを市場に示すもので、本来は売り材料になりにくい。CDSの急上昇についても、米JPモルガンは「市場参加者がリスクを回避するための一方的な取引が関係しており、株価下落がドイツ銀のファンダメンタルズを反映するものだとはみていない」と指摘する。
ドイツ銀株が急落した理由ははっきりしないが、過去にも「標的」となったことを多くの市場参加者が思い起こしたに違いない。
ドイツ銀は2015年以降、欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利政策の長期化による収益悪化に加え、不良債権問題や不祥事などで、財務の健全性に対する懸念が高まっていた。15年12月期通期の決算は最終損益が7年ぶりに赤字に転落。金融情報会社リフィニティブによると、16年初めに同社の5年物CDSの保証料率は2.7%程度まで上昇していた。一方、24日には2%を上回ったが、16年の水準にはまだ距離がある。スイス金融大手UBSに買収されたクレディ・スイス・グループのCDSは一時10%を上回る水準まで保証料率が急騰していた。
しかも、2年連続で赤字だったクレディ・スイスとドイツ銀の状況は異なる。ドイツ銀が2月に発表した22年12月期通期決算は、純利益が前の期比2.6倍の50億2500万ユーロとなり、3年連続の黒字だった。税引き前利益は65%増の55億9400万ユーロと07年以来15年ぶりの高水準。大規模なリストラやリテール部門の統合、事業再編など構造改革を着々と進めてきており、業績は好転している。
ECBのラガルド総裁は「欧州の銀行部門は回復力があり、資本と流動性は強固だ」と繰り返し表明しており、必要に応じて対応する用意があるとも強調する。ただ、インフレは単一通貨ユーロの創設後の最高水準にあり、ここまで急速なスピードで利上げが進んだ例も過去にない。金融引き締めの影響がこの先どういう形で顕在化してくるか不透明感は根強く、金融システムのひずみへの警戒は簡単に消えない。27日のドイツ銀株は前週末比6%高で取引を終えたものの、前週の急落分は取り戻せず、下値を拾う動きは広がりを欠いたままだ。