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ネットゼロ、エネルギー業界の協働がカギ(HSBCリポート)

記事公開日 2023/4/28 16:30 最終更新日 2023/4/28 18:27 HSBC エネルギー ネットゼロ COP28

ゾーイ・ナイト(Zoë Knight)氏
HSBCセンター・オブ・サステナブル・ファイナンス グループ責任者
兼 クライメート・チェンジ MENAT(中東・北アフリカ・トルコ)統括責任者

第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)でスルターン・アル・ジャーベル博士が議長に任命されたことは、国際協力体制の重要性を物語るものです。アブダビ国営石油会社の最高経営責任者(CEO)である博士が選ばれることによって、エネルギーセクターは(温暖化ガス排出の)ネットゼロを達成するための世界的取り組みの中心に位置付けられることになります。

議長任命以来、博士は気候危機に対処する取り組みを加速するための「大幅な軌道修正」を要請してきました。各国の政府だけでは達成できないため、特にエネルギーセクター内での企業の行動が必要になります。金融、政府とのコラボレーションをエネルギー業界レベルで深めることにより、(気温上昇抑制の)1.5度目標に照準を合わせることが可能になります。

石油・ガス会社、そしてより広範なエネルギーセクターが、ネットゼロへの移行を主導すると考えられます。エネルギー企業は、エネルギー転換に必要な新しいソリューションを生み出すための技術的能力、財政力、人材を有しています。ネットゼロへの道筋は企業や国ごとに異なります。従って一つの市場で機能しているソリューションはグローバルにも活用できる可能性があり、新しいビジネスチャンスが生まれます。

移行計画はネットゼロを達成する上で必要となる、このような変革を導く地図になります。各国ごとの計画はかねて存在していますが、民間部門の役割の重要性が認識されていることから、企業レベルの移行計画に急速に注目が集まっています。

アラブ首長国連邦(UAE)が開催ホスト国としてCOP28の準備を進める中で、エネルギー企業が信頼できる企業の移行計画の内容の定義に向けて協働する、またとない機会が到来しています。業界全体の取り組みによって、二酸化炭素の削減目標、投資決定、クリーンエネルギーの実現などの枠組みと主要な指標を確立することが可能になります。

移行計画の標準化、金融セクターに先例 

COP26の前にも、同じようなプロセスが金融セクターで進められました。金融機関がいかにネットゼロに沿った方針や目標、取り組みを策定すべきかという手順を標準化するために、ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)が設立されました。

2年以上にわたって金融セクターは、銀行が顧客に協力して移行資金を提供することを前提とした業界全体のアプローチを開発してきました。従って資金面の準備は一段と整ってきています。次の課題はネットゼロへの移行に必要な規模の資金を投入することです。

最も必要とされる場所に資金を振り向ける上で、エネルギー企業にもできることがあります。企業の移行計画について、エネルギー業界としての基準があれば市場と投資家の信頼は高まることでしょう。

実用化に重点を置いた計画こそが最も有効です。エネルギーミックスを移行させ、クリーンなインフラと再生可能エネルギーを拡大し、排出量を削減していく措置が出発点となるでしょう。その後は銀行や投資家が必要な変更を見極めつつ資金提供していくにあたり、プロジェクトのパイプラインが役立つようになります。

エネルギーセクターとの提携を通じ、銀行は大規模な排出量の削減に必要な投資を促進することができます。しかし秩序だった移行には、石油とガスの需要減少に合わせて、それらの供給を維持していくための継続的な資金調達も必要になります。

金融との協調も容易に

従って私たちは、移行期に積極的な役割を果たすエネルギー企業に資金を提供し、新しい技術への投資を支援することに注力しています。私たちは、技術的な専門知識、強固なバランスシート、大規模なインフラプロジェクトを遂行した経験など、この変化の実現に必要な能力を持つ企業と協働していきたいと考えています。

企業レベルでの移行計画が精緻化すればするほど、ますます多くの銀行が移行を主導するエネルギー会社に融資を行うことができるようになります。

このような軌道修正は複雑で困難なものになります。1.5度目標を実現可能なものとするには、2030年までに排出量を大幅に削減する必要があります。私の楽観的思考を支えているのは、エネルギー業界が必要な変化を主導していく大きな可能性を有していることです。

エネルギーセクターでの横断的なコラボレーションは極めて重要な第一歩です。それにより銀行はネットゼロ目標を支える資金を提供し、大きな変化をもたらすことが一層可能になります。私たちは、公共政策がますます変化を奨励する方向に向かっているのを目の当たりにしています。米国のインフレ抑制法から欧州グリーンディール政策に至るまで、公的資金拠出の規模は前例のないものとなっています。

2023年11月にはUAEでCOP28が開催されます。ゲームチェンジャーとなるべき協力体制やソリューション、成果を通じて排出削減の進展を加速させるという明確かつ意欲的な目標があります。今回の会議は、エネルギーセクターが新たなソリューションを主導し高度化する契機となる可能性があります。一段と深化したコラボレーションを通じてこそ、商業的機会がもたらされ、より安全で持続可能なエネルギーの未来を実現することができるのです。


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