夏場にかけて円安が一段と進むとの見方が外国為替市場で広がっている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した6月の月次調査<外為>では、日米欧で6月と7月に開催される2回の金融政策決定会合を経て、円がドルやユーロに対して下落するとの予想が過半数を占めた。金融政策の方向性の違いが背景にある。
調査では7月下旬に予定される日米欧中央銀行の会合後、主要3通貨の強弱関係が調査時点に比べてどうなるか聞いた。強い順に「ドル>ユーロ>円」となると回答した人の割合が29%で最も多く、「ユーロ>ドル>円」が23%で続いた。
カギは金融政策の動向だ。2度の会合での3中銀の政策決定について聞いたところ、米連邦準備理事会(FRB)は利上げを「6月見送り、7月実施」とみる市場参加者が49%と半数近くだった。欧州中央銀行(ECB)は利上げを「両方とも実施」が63%を占める。一方、日銀の長短金利操作(YCC)修正は両会合とも「見送り」予想が63%だ。金融引き締め観測に乏しい日本で通貨安が進むとの見立てが多い。
クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏は、日銀が「政策修正の機会を逃した」と指摘する。政府が公表した2023年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案では、「大胆な金融政策」や「デフレ脱却」に引き続き取り組む方針が明示された。金融政策の修正は株高を支える良好な金融環境を変化させる可能性もあり、日銀は極めて動きにくい状況にあるとみる。米国の利下げが遠のいていることもあり、対ドルでの円の上値余地は限られるという。
一段と円安が進んだ場合、政府・日銀による円買いの為替市場介入の可能性も気になるところだ。財務省と金融庁、日銀は5月30日に3者会合を開き、市場では急速な円安進行に対する当局のけん制との受け止めが広がった。介入が実施される円・ドル相場の水準を聞いたところ、最多は1㌦=145円の26%で、150円の19%が続いた。昨年最初の介入が入った145円台が節目として意識されている。
もっとも介入自体への警戒感はそれほど高まっていない。輸入物価高などが問題視された昨年に比べ、円安基調を無理に転換させる必要性は乏しいとの見方もある。為替介入を「実施しない」との回答は17%だった。
調査は6月5~7日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者78人が回答した。
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