31日に発表された7月のQUICK月次調査<債券>では、23年が折り返したタイミングということもあって、「23年前半で最もサプライズだった項目」を尋ねた。回答比率が最も高かったのは「日本の株価」(55%)で、次いで「欧米の景気」(26%)、「日本の金融政策」(26%)となった。債券市場でも日本株の上昇がサプライズだったようである。なお、今回は「年内の日経平均株価の最高値」も尋ねたが、平均値は3万5072円となった。年後半は緩やかな上昇が見込まれている。
「今年の後半で最も注目する項目」については、「日本の金融政策」(73%)が最も回答を集めた。調査期間終了後の7月28日に日銀はサプライズでイールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化を決めた。今回の調査によると、日銀の政策に注目している市場参加者は多かったことから、市場は冷静に対応できると予想される。ほかには、「国内の物価動向」(27%)、「欧米の景気」(27%)、「欧米の金融政策」(27%)と、比較的回答がばらけた印象である。なお、足元で懸念が広がっている「中国等新興国の経済」(4%)はあまり回答が集まらなかった。債券市場への影響は限定的だとみられているようである。
次に、日銀が7月14日に「多角的レビュー」の概要を公表したことを受け、期待や政策への影響を尋ねた。そもそも「多角的レビュー」の専用サイトを知らなかったという回答比率は31%となり、市場の隅々まで存在が浸透しているということではなさそうである。背景には「ワークショップ」(23年12月頃、24年5月頃)のタイミングが「遅い」(47%)という回答が多かったように、まだ具体的に意識する段階ではないという認識が多いのだろう。しかし、「多角的レビュー」の内容には「大いに期待している」「少し期待している」の合計が56%と、過半となった。これまでの金融政策についてレビューすることの重要性が認識されているようである。
今後の金融政策への影響も「大きく影響する」「少し影響する」の合計が69%となった。日銀はYCCの柔軟化を決定したが、YCCの枠組みは維持したままである。マイナス金利政策もいずれ解除されることになるだろう。その際、「多角的レビュー」が影響することになるのだろうか。今後の展開に注目が集まる。
【大和証券 チーフエコノミスト 末廣 徹】
調査は7月25~27日にかけて実施し、債券市場関係者124人が回答した。
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