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ふるさと納税ってどんな制度?

記事公開日 2023/11/9 18:00 最終更新日 2023/11/9 18:33 経済・ビジネス コラム・インタビュー ふるさと納税 市場用語再点検 金融コラム

市場用語再点検!ふるさと納税

【QUICK Money World 片岡奈美】税金控除との関連もあり年末が近くなってくると特によく目にするようになる「ふるさと納税」制度。総務省によれば、2022年には約890万人もの方が利用したといいます。利用者はここ数年で劇的に増えているのですが、でも、まだまだよくわからないという方も少なくないようです。——お得に欲しいものが手に入ると聞くけど納税と聞くと手続きが難しくて面倒そう、そもそも自分の“ふるさと”と関係しないとだめなんじゃないの――なんて、敬遠されている方、それは何とももったいない。ふるさと納税という制度、使い方次第では、家計の足しになったり、欲しかった食べたかったりしたあの商品が実質2000円の出費で手に入る――ちょっと嘘みたいにすごい制度なんです。

それでも「実質」「2000円」でいろんな物が手に入るとは、そんなうまい話があるはずないしなんだか胡散臭いと思っている方(過去の私がそうでした…)に向けて、今回はこのふるさと納税について、仕組みや取り組み方などをわかりやすくご紹介していきます。

そもそも「ふるさと納税」ってどんな制度?

「ふるさと納税」とは、ご自身が好きな自治体を直接応援できる制度です。でも、応援するために地域の物品をわざわざ取り寄せたり、赴いたりするわけではありません。具体的にはどのように応援をする仕組みなのか、ご存じですか?

ふるさと納税は制度名に「納税」という言葉が付いていますが、税金を納めて応援するわけではありません。都道府県や市区町村といった自治体へ直接「寄付」をすることで、ご自身の選んだ自治体の活動を応援できる制度です。

そして、寄付をする先は、ご自身の生まれ故郷などに限る必要もありません。出身地などの他、旅行先や被災地支援など何かしら思い入れのある自治体を自由に選び、応援することができます。そして、応援しようと寄付した額のうち2000円を超える部分について、一定の限度額の範囲内(※)であれば、所得税と住民税から原則(※)全額が控除される制度です。ですので、何か新しく税を納めるわけではありません。(※ふるさと納税で全額控除される額は所得や家族構成により異なります。)

ふるさと納税制度の創設以来、地方自治体を中心に寄付をより集めたいと魅力的な返礼品を用意する動きが広がりました。返礼品目当てで寄付金が集まるようになった側面は強く、“ふるさと納税はお得”という話がよりクローズアップされているわけです。例えば、寄付金額5万円で応援先に選んだ自治体にふるさと納税をして、返礼品としてお米30キログラムが送られてくるとします。その寄付金額が年間上限額の範囲内であれば、2000円を超える4万8000円分は所得税と住民税から控除されますので、“実質2000円”の寄附で自治体からの返礼品が受け取れることになります。上記の図に当てはめると以下のようになります。

どんなに安く見積もっても、2000円でお米30キログラムは買えそうにありませんよね。総務省は過度な返礼品競争を防ぐため、返礼品は寄付額の3割以下、返礼品の調達費用や送料など経費の総額を寄付額の5割以下とするなどの基準を設けてはいますが、寄付金額が大きいほど実質2000円の支出で受けられる返礼品の「お得さ」は際立ちます。

お得な制度として人気を集めているふるさと納税ですが、そもそもは、納税者が寄付先を選び、税の使われ方について考えるきっかけとなると期待されている制度です。育ててくれたふるさとや支えてくれたふるさとへ、都会に居住していてもふるさと納税という制度を活用すれば、自らの意思でふるさとに貢献することができるからです。

総務省はふるさと納税には3つの大きな意義——➀納税者が選択することで使われ方を考えるきっかけになる ②地方の環境をはぐくむ支援になる ③自治体間の競争が進み地域のあり方を考えるきっかけになる――を掲げ、納税者と自治体が共に高めあう関係となることを期待しているとしています。ふるさと納税による寄付は自治体の収入増になりますから、よりよい施策に取り組むための財源として自治体の税収だけでは賄えない部分をカバーすることができます。魅力的な返礼品で地場産品をアピールできれば地場産業の活性化にもつながりますし、新たな需要を呼び込むこともできるかもしれません。返礼品のお得さばかりにとらわれず、ふるさと納税を通じた社会的な貢献にも目を向けてみると、より有意義にふるさと納税に取り組むことができるのではないでしょうか。

 

返礼品では何がもらえる?

利用者のメリットとして、税金控除や魅力的な返礼品を受け取れることが挙げられるふるさと納税。では一体どのようなものが返礼品になっているのでしょうか。巷には“ふるさと納税”と検索すればずらり仲介サイトの案内が並びますから、探すのはそんなに困難なことではありません。

ちなみに、各自治体のホームページなどでもふるさと納税に関する紹介は用意されています。ですが、寄付をしたい自治体が決まっている場合はともかく、複数の自治体を比較検討したい場合にはかなりの手間がかかります。仲介サイトでは複数の自治体の返礼品や寄付金額、寄付したお金の使い道などからショッピングサイトのように寄付する自治体を選び、簡単にふるさと納税の手続きを進めることができます。(昨今は仲介サイトが乱立しており、一部には寄付金の詐取などを目的にするサイトが存在しているとの報道もあります。総務省も、金銭をだましとられる被害が実際に発生しているとして注意を呼び掛けています。)

多くの仲介サイトがありますが、ふるさとチョイスやさとふる、アイモバイル6535)が手掛けるふるなびなどはよく耳にされるのではないでしょうか。楽天グループ4755)や、ANAホールディングス9202)傘下の全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL、9201)、複数の百貨店などもふるさと納税のサイトを手掛けていますから、普段ネットショッピングなどで利用するサイトでそのまま買い物感覚でふるさと納税の手続きを進められる場合もあるでしょう。

試しに仲介サイトを開いてみてください。海産物やフルーツ、お肉、お酒と言った食品・飲料を筆頭に、家電、日用品、旅行、その他金券などさまざまなものが並んでいることでしょう。

仲介サイトでは多くの返礼品を容易に比較・検討できますから、応援したい自治体が決まらない人は寄付金額に見合う範囲で欲しい返礼品を探してみてはいかがでしょうか。返礼品は寄付金額の3割以下と決まってはいますが、同じ寄付金額でも受け取れる返礼品の量や質が異なる場合もあります。送料や実売価格から推定する「還元率」のようなものを見てみるとふるさと納税で感じられる「お得感」も変わってくるかもしれません。

ふるさと納税を始めるには?

『実質2000円とはどういう意味なのか』を理解したうえで返礼品の数々を眺めていると、なるほど取り組んでみたいと思われる方も少なくないと思います。ここでふるさと納税に関する手順を追いつつ、注意点を一度整理しておきましょう。

➀限度額を調べよう

ふるさと納税で寄付をした際に所得税や住民税から控除される額には限度があります。ふるさと納税をする方の給与収入や家族構成により異なりますので、ふるさと納税に取り組む前に必ず一度確認しておきましょう。万が一この年間上限を超えてしまうと控除の対象外となり、“実質2000円“以上の自己負担をすることになってしまいますので、きちんと把握することが必要です。

控除額については、ふるさと納税の仲介サイトではご自身の所得などから控除額をシミュレーションできるサービスが提供されています。所得や家族構成などで概算を把握したい場合には、総務省が提供している「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」も参考になるでしょう。

②寄付する先を決めよう

ご自身の控除上限額を確認できたら、寄付先の自治体を選びましょう。応援したい地域、事業、復興支援などから絞り込んでもよいでしょうし、返礼品から寄付先を選ぶのもよいでしょう。

③寄付の手続きをしよう

ふるさと納税で自治体に寄附をした場合には、所得税や住民税を減らす寄付金控除が受けられることは前述した通りです。控除を受けるためには、税務署へ確定申告が必要です。ご自身で申告をしなければ、控除や還付は受けられません。

確定申告をする――というと、事業を営む人や別途収入のある方などはなじみがあるかもしれません。ただ、給与所得者は年末調整で手続きが完了する場合が多く“なんだか面倒そうだ”と単語を見ただけで敬遠される方もいらっしゃるかもしれません。ふるさと納税のお得感はわかるけれども、見合う労力が過大では尻込みしてしまいますよね。

そこで『ふるさと納税をする自治体が5つ以内』で『ふるさと納税以外に確定申告をする必要がない』場合には「ワンストップ特例制度」を使い、確定申告の代わりとすることができます。寄付に対する返礼品が自治体から届いたら、ワンストップ特例申請書を提出すれば手続きが完了します。

ふるさと納税以外に確定申告をする必要がある場合や、寄付先が6つ以上の自治体になったり、年末ぎりぎりの寄付でワンストップ特例制度の利用には間に合わなかったりといった場合には、忘れずに確定申告の手続きをしてください。確定申告の際には、各自治体から寄付ごとに郵送される「寄付金受領証明書」の添付が必要です。ふるさと納税の仲介サイトを利用した場合には、特定事業者が発行できる「寄付金控除に関する証明書」で代用することも可能かもしれません。必要になる書類を確認して、申告手続きに備えましょう。

 

まとめ

今回ご紹介してきた「ふるさと納税」制度はいかがだったでしょうか。日本のどこに住んでいても思い入れのある自治体を直接応援できる制度として、今後も利用が拡大していくと見込まれています。返礼品を選ぶ楽しみもありますし、返礼品を通じて地方のことを知り、普段何気なく納めている税のことを考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。

ふるさと納税では被災地支援や子育て、介護の拡充など、寄付を受ける自治体の資金使途を寄付する側が選択することもできますから、お金と賢く向き合うことの重要性も改めて認識されるかもしれません。QUICK Money Worldでは“お金との賢い付き合い方”をテーマにした記事のほか、今回ご紹介した“寄付への返礼品”に近い“株主へのお礼”のような株主優待制度についてなど、役立つ情報をたくさん紹介しています。会員登録しなければ読めない記事もありますので、ご興味がある方はぜひ無料会員登録をお試しください。メールアドレスの登録だけでなく、Googleアカウント・Apple ID等でも登録できます。人気記事を紹介するメールマガジンや会員限定オンラインセミナーなど、無料会員の特典について詳しくはこちらから。

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著者名

QUICK Money World 片岡 奈美


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