「クルマは購入すべきではない。リースを選択すべき」。バークシャー・ハザウェイのチャーリー・マンガー副会長が常連客の1人だったサンタモニカのドイツ車ディーラーは多くを学んだ。新車は3年で価値が半分近くに落ちるため消費者に不利。いつもリース契約していたという。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の盟友であり、ビジネスパートナーだったマンガー氏が11月28日、カリフォルニアの病院で死去した。99歳だった。
マンガー氏をめぐる報道は速報から1週間近くたっても絶えない。ロイター通信は、バフェット氏の右腕だった「パサデナの賢人」が他界したと報じた。ネブラスカ州オマハで暮らすバフェット氏に対し、マンガー氏はロサンゼルス郊外のパサデナを拠点にしていた。フォーブス誌は、投資のレジェンドであり知見に富んだマンガー氏を世界が失ったと伝えた。バークシャーの価値を高めるのに欠かせない存在だったとしている。CBSニュースは、1965年から2022年までバークシャーの株価は378万7000%上昇し、S&P500種株価指数の2万4700%を上回ったとする株主への手紙を引用、バフェット氏を助けバークシャーを伝説的な金融会社に成長させたと解説した。
マンガー氏は多くの名言を残した。バフェット氏と同様にビリオネア(資産が10億ドル=約1500億円=超)と思えないシンプルな生活を変えなかったマンガー氏。同じ家に70年間住み続けた。生前にCNBCのインタビューで、「豪邸に住む人は幸福になれない」と語った。バフェット氏とともに豪邸を建てた不幸な友人を何度もみてきたとしている。別のインタビューでは「まれな機会を認識する能力を習得すべき」とも述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「最良と信じる考えを破壊することで成功した」と語ったと伝えた。CNNは、「支出は収入を超えず、賢明に投資、有害な人との行動を回避、生涯を通じて学ぶことが成功の鍵」と主張したと報じた。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙はマンガー氏の死去を受け、バフェット氏の最高経営責任者(CEO)、会長、投資責任者の後継問題がすぐに協議されることはないと報じた。バフェット氏を引き継ぐ次期CEOとしてグレッグ・アベル副会長が保険を除く全事業を経営、バフェット氏の息子ハワード・バフェット氏が会長に就任する見通しであり、10年以上前からトッド・コームズ氏とテッド・ウェシュラー氏が投資ポートフォリオを管理しているとしている。英フィナンシャル・タイムズ紙は、バフェット氏が経営トップで残るため後継者計画がすぐに変わることはない見通しだが、投資家は来年2月に予定されるバフェット氏の投資家への手紙に注目するだろうと伝えた。
「自分が今夜他界したら、バークシャーの株価は明日上昇する」。バフェット氏は2017年の年次株主総会でこう述べた。マンガー氏の死去後、バークシャーの株価は下落。その後やや戻した。盟友を失くした93歳のバフェット氏の発言と行動への注目度が一段高まった。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。