【QUICK Money World】2024年1月、いよいよ新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まります。非課税保有期間が無期限になるとともに、投資枠も大きく増額されるこの制度改正を、皆さんはどのように投資に取り入れていく予定でしょうか?
QUICK Money Worldでは2023年、「アナリストが手間暇かけて提案する新NISA活用術」と題したオンラインセミナーを3回にわたって開催。QUICK企業価値研究所の山藤秀明上席アナリストが、演題の通り手間をかけてじっくり編み出した新NISAの活用方法を紹介しました。本記事では、これらのセミナーの内容を簡単に振り返ります。ぜひ2024年の下準備にご活用ください!
※当記事の図、グラフはすべて山藤氏セミナー資料より抜粋しています。セミナー資料はアーカイブ動画の記事からダウンロードできます。
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新NISA導入の最大のポイントとは?
NISAは株式や投資信託などへの投資で得た利益が、一定の条件のもと非課税になる制度です。まずは、新NISAの開始によってこれまでと何が変わるのかを改めて復習してみましょう。
1つ目の大きなポイントは、非課税枠で投資できる金額です。23年までの旧NISAで「一般NISA」「つみたてNISA」と分類されていた投資枠は、新NISAでは「成長投資枠」「つみたて投資枠」と名前を変えました。成長投資枠の年間投資枠は2倍、つみたて投資枠は3倍といずれも大きく拡大しています。さらに、旧NISAではどちらか一方の枠しか選択できなかったのに対し、新NISAでは両方を併用することができます。これに伴い、当然非課税限度額の総額も拡大しています。
さらに、非課税期間が無期限になったことも重要な変更点と言えるでしょう。旧制度で、例えば一般NISAでは5年に限定されていた非課税期間の制限がなくなり、限られた時間で売却タイミングを考えなければならないなどのデメリットがなくなりました。山藤氏は非課税制度の恒久化、つまり長期資産形成が可能になったことが新NISAの最大のポイントであるとして、この点に注目した「新NISA活用術」を紹介しました。
新NISA活用術①長期投資で重要な「将来の配当」に注目
新NISA活用のポイントは「長期投資」である、という前提のもとでどういった銘柄選びをするべきなのでしょうか。山藤氏がまず提唱するのは「配当」です。
長期で見た配当の重要性が分かるのが下の図です。配当込みTOPIXと配当無しTOPIXの推移を比較すると、長期のパフォーマンスには大きな差が生まれることが見て取れます。わずかな配当の差でも、長期の投資成果には大きな影響を及ぼします。さらに近年、企業が積極的な増配姿勢を見せていることで、配当の重要性は一層高まっています。
では、予想配当利回りの高い銘柄を選んで投資すればよいのでしょうか? 山藤氏の答えは、「今ではなく、将来の配当利回りが高い銘柄に投資する」です。
長期投資を前提とした場合、今よりも将来の配当利回りが高い銘柄に投資できた方が、より多くの利益を得られるうえ、長い期間恩恵を受けることができます。例えば、NTT(9432)株の配当利回りは、2008年時点で2.9%でした。しかしこの時購入したNTT株を保有し続けていた場合、22年度の配当利回りは12.9%にまでなります。さらに今後も、このまま銘柄を保有し続ける限り、高水準の配当利回りを享受し続けられる可能性が高いということになります。
実は、長期投資を前提とした場合、将来的に配当利回りが10%を超えるような銘柄は決して珍しくありません。山藤氏によると、15年間保有し続けたと仮定した場合の現在の配当利回りを算出すると、現在東証プライム市場に上場している銘柄の9%が配当利回り10%以上となり、一部は30%以上に達しています。
配当利回り10%を目指す銘柄選びとは?
それでは、将来の配当利回りが高い、つまり「長期的に増配が見込める」銘柄をどうやって探せばいいのでしょうか。山藤氏が指摘する銘柄選びのポイントは、「リアル」「ストック」「安定成長」の3つです。
高成長産業として名前の挙がりやすいネット産業は、成長が早い分成熟も早い面があるため、数十年先を見越すような長期投資では注意を要する面があるとのこと。そこで提案するのは、対極にある「リアル」産業、特に収益構造で安定感のある「ストック(課金)事業」を営む企業です。こうした企業は成長は緩やかでも、景気変動の影響を受けにくいという強みがあり、長期的に利益や配当の「安定成長」が見込めると言います。
具体的な投資対象を、投資期間をさらに区切って考えてみます。山藤氏が中期(10年超)の投資対象として提案するのは、東京センチュリー(8439)やオリックス(8591)、三菱HCキャピタル(8593)といった大手リース会社です。リース会社は継続的にリース料を徴収するストックビジネスであり、これらはストックの指標となる営業資産がともに増加している銘柄です。現時点で3%を超える一定の利回りがあるうえ、長期の安定増益・増配が期待できるとみています。
加えて、長期(20年超)投資対象として提唱するのは、ストック型ビジネスを営む情報サービス企業です。オービック(4684)や大塚商会(4768)は、情報システムの納入による一時的な収入ではなく、その後の継続的な保守サービス収入を重要な収益源としているのが特徴。中小企業向けに強みがあるゆえの潜在的な成長力、同業大手と比べての設備投資負担の軽さも評価ポイントとしています。
また山藤氏は、高配当株銘柄を対象としたETF(上場投資信託)への投資も選択肢と話します。セミナーでは、NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)など6つのETFが紹介されました。
山藤アナリストの選定銘柄やETFをもっと確認したい方は、ぜひアーカイブ動画と講演資料(※)をご確認ください! ▶2023年4月13日開催「アナリストが手間暇かけて提案する新NISA活用術 ~配当利回り10%超を目指す投資術~」 ※資料に掲載されている選定銘柄、データ等はセミナー開催時点のものです。 |
新NISA活用術②長期株価上昇が見込める投資テーマは
長期資産形成を見据えた新NISAの制度変更を生かすうえでは、長期的な投資テーマに注目するのも有効な手段です。1つ目のテーマは「少子高齢化」。少子高齢化に伴って需要が増える医療機器や医薬品の関連銘柄は長期的にみて好調に推移しています。
業種別指数で長期的に高いパフォーマンスを記録している精密セクターの時価総額構成上位の銘柄を見ると、HOYA(7741)やテルモ(4543)など、医療機器を主力事業とする企業が並んでいます。業種全体では低迷している電機セクターも、医療機器関連銘柄であるシスメックス(6869)などの株価は長期的に好調に推移しています。
少子高齢化は今後も世界的に確実に進む構造問題です。特に「世界の工場」と呼ばれてきた中国での少子高齢化がこれから加速することで、省力化投資を強力に後押しすると考えられます。この点から、工作機械や産業用ロボットの需要増の恩恵を受ける銘柄、特に中国で事業を展開する企業に追い風が吹きそうです。山藤氏はオークマ(6103)など5銘柄を代表的な中国関連銘柄として紹介しました。
同様に着実に進展すると見込まれる長期テーマとしては、「電動化、自動運転化」も挙げられます。これらの変化によって、電子部品の需要増加が見込まれます。投資テーマとしてはいったんブームが去ったようにも見える「CASE」(電動化、自動運転など自動車業界の変革につながる新技術の総称)ですが、山藤氏は「電子部品大手各社の売上高の構成をみると、自動車向けの比率は着実に高まっている」と指摘します。例えばローム(8963)は24年3月期、自動車向けの売上高比率が全体の半分近くまで高まる見込みです。
CASEと少子高齢化には、株式市場でかつて投資テーマと目されたものの足元では市場の注目が薄れているという共通点があります。変化が緩やかなため株式市場での注目度は長続きしませんでしたが、長期的には着実に進展すると見込まれる構造変化のため、長期投資にふさわしいテーマと言えるでしょう。
山藤アナリストの選定銘柄やETFをもっと確認したい方は、ぜひアーカイブ動画と講演資料(※)をご確認ください! ▶2023年8月1日開催「アナリストが手間暇かけて提案する新NISA活用術Part2 ~新NISAならではの長期投資テーマと銘柄群~」 ※資料に掲載されている選定銘柄、データ等はセミナー開催時点のものです。 |
新NISA活用術③長期パフォーマンス良好の中小型株
第3回セミナーで取り上げられた長期投資手法、それは中小型株投資です。2023年は、金利上昇局面に入ったこと、海外資金の流入により主力株の株価が押し上げられたことなどから大型株が好調となり、中小型株は相対的に弱い動きが目立ちました。ただ山藤氏は、これは特殊要因が複数重なったことによる異例の事態であり、長期的には中小型株のパフォーマンスは大型株を圧倒的に上回っていると指摘しています。
日本株が米国株などと比べて長期的に株価が低迷してきたのは周知の事実ですが、実は日本の小型株指数でみると、米国の主要株価指数と比べても大きな差は生まれていません。しかし、株価の低パフォーマンスが目立つ主力銘柄が時価総額で国内株の約4割を占めているため、日本株全体の値動きは見かけ上弱くなってしまいます。日本株の長期低迷という「誤解」は、銘柄数では国内市場のわずか1%にすぎない主力株の低迷が演出したもの――というわけです。一方、小型株は銘柄数では市場全体の8割近くを占めています。
小型株で構成される「TOPIXスモール指数」の構成銘柄の株価騰落率の分布をグラフ化すると、長期運用における小型株の投資妙味がさらに明確になります。2000年以降、株価が2倍以上になった銘柄は全体の6割、5倍以上になった銘柄でも2割に上りました。個別株投資を選ぶ場合でも中小型株には大きな魅力があると言えます。
とはいえ、銘柄選別の精度次第で大きく結果が変わってしまうのもまた個別株投資です。セミナーでは、前述の「将来の配当利回り」に着目し、長期増配が見込まれる中小型株をさまざまなデータを駆使して山藤氏がピックアップ。2033年時点での予想配当利回りを試算し、利回り水準や予想の信頼度などを考慮して、最終的には芙蓉リース(8424)など6銘柄まで絞り込みました。
山藤アナリストの選定銘柄やETFをもっと確認したい方は、ぜひアーカイブ動画と講演資料(※)をご確認ください! ▶2023年10月10日開催「アナリストが手間暇かけて提案する新NISA活用術Part3 ~日本株長期低迷の常識を覆す投資術~」 ※資料に掲載されている選定銘柄、データ等はセミナー開催時点のものです。 |
新NISAを活用して長期投資に取り組もう
本記事では、山藤アナリストが過去3回のセミナーで紹介した、渾身の「新NISA活用術」をざっと振り返りました。いかがでしたか? ぜひ長期の資産形成を促す新制度の特性を生かして、2024年の資産運用に臨んでみてください。
実際のセミナーでは背景や銘柄選定方法、具体的な銘柄群などについて詳しく触れています。ご興味のある方はぜひ元のセミナー動画や講演資料をご確認ください。
▶新NISAセミナー第1弾「配当利回り10%超を目指す投資術」動画へ
▶新NISAセミナー第2弾「新NISAならではの長期投資テーマと銘柄群」動画へ
▶新NISAセミナー第3弾「日本株長期低迷の常識を覆す投資術」動画へ
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さらに、1月15日(月)18時半からは「新NISA活用術」セミナーシリーズの第4回が開催! ここまでの内容をさらにパワーアップさせた「総括編」となります。よい2024年のスタートを切るヒントとするべく、奮ってご参加ください!
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