【QUICK Money World 吉田 晃宗】8日の東京株式市場で日経平均株価の終値は前日比743円36銭(2.06%)高の3万6863円28銭と、1990年2月20日以来、約34年ぶりの高値を更新しました。朝から堅調に推移していた株式相場ですが、日銀の内田真一副総裁の発言が伝わると、上げ幅を急速に広げました。何が起こったのかをQ&A形式で解説します。
Q:日銀副総裁は何を話したの?
内田副総裁は午前、奈良県での講演で、マイナス金利解除後について「どんどん利上げをしていくようなパス(道筋)は考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになる」と話しました。また上場投資信託(ETF)の買い入れに関しても、現在の買い入れ金額は小さく「仮に終了して市場の価格形成に完全に委ねることとしても、市況等への影響は大きくない」との認識を示しました。これらの発言が、買いの勢いが盛り上がったきっかけと言われています。
Q:どうして日銀副総裁の発言が買い材料になったの?
日銀の大規模な金融緩和が今後どうなるのかが、市場関係者の関心の一つとなっています。
市場は、日銀が3~4月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和政策の一つである「マイナス金利」を解除すると見ていますが、解除後に「これまで通り緩和的な政策を続ける」という解釈と「解除後も正常化(利上げ)を続ける」という解釈に分かれていました。日銀は直近の物価・経済・金融情勢のデータを見極めながら、政策修正のタイミングを見計らっているためです。
本日の副総裁の発言を受けて、当面は「マイナス金利を解除するだけでこれまで通り緩和的な政策を続ける方針だ」という認識が強まったと、市場関係者は捉えたようです。とりわけ、海外の投資家が敏感に反応したという声もあります。
<参考記事>
Q:解釈の違いがどうして株式相場に影響を与えるの?
もし、マイナス金利の解除後に「これまで通り緩和的な政策を続ける」のであれば、日米金利差の縮小が急速に進まず、現在の為替の円安基調は維持されるとの見方があります。円安基調が続けば、自動車や電機といった円安の恩恵を受ける輸出関連企業の業績は引き続き堅調だと見込めます。
一方、「解除後も正常化(利上げ)を続ける」場合、円高が進むと懸念する市場関係者もいます。政府・日銀が円買いの為替介入に動きやすくなるという見方もあります。円高が急速に進めば、輸出関連企業の業績には逆風が吹くことになります。
次の政策決定会合が、日本株の上昇基調の転換点になるのか、スピード調整にとどまるのか、それを市場は見極めようとしています。
<参考記事>