【NQNロンドン=蔭山道子】欧州株式市場で、航空宇宙・防衛の関連株が堅調に推移している。特に上昇が目立つ独ラインメタルの株価は2月21日終値で400.00ユーロと、2023年末比で39%高い。ロシアによるウクライナ侵攻や紅海での商船攻撃といった地政学リスクの高まりを背景に、軍需品や電子機器などの需要増加が関連各社の業績を支えるとの見方が根強く、アナリストによる目標株価の引き上げも相次いでいる。
英航空・防衛大手BAEシステムズが21日公表した2023年12月通期決算は、前の期比で増収増益だった。戦闘機を手掛ける航空事業をはじめ海洋、電子システム事業などで収益が順調に伸びた。
受注も堅調で、全体の売上高やフリーキャッシュフロー(FCF)の水準は11月に示していた見通しを上回った。BAEが示した中長期的な見通しも踏まえ、JPモルガンは21日付で目標株価を1300ペンスから1400ペンスに引き上げた(21日終値は1241.50ペンス)。
欧州エアバスや英BAE、英ロールス・ロイス・ホールディングスなど主要な航空・防衛企業で構成するストックス欧州航空宇宙・防衛株指数は21日時点で、昨年末と比べて12%高い水準にある。上昇率は欧州の主要600社で構成するストックス600(2.5%)を超え、ハイテク株高で押し上げられてきた米ナスダック総合株価指数(20日終値が23年末比で4.1%上昇)も上回る。
BofAのアナリストチームは民間航空機・防衛関連は「過去10年で最も力強い成長サイクルにある」と分析する。欧州各国が軍事費を実際に確保していけるか、投資家が懸念していると指摘しながらも、24年は軍事費を巡る各国の方針が変更になる可能性は低そうだとして、関連各社の業績拡大とともに株価収益率を再評価する余地があるだろうとの見方を示す。
ジェフリーズはFCFの増加などを予想して2月中旬に英BAE、独MTUエアロ・エンジンズ、英ロールス・ロイス、英バブコック・インターナショナル・グループの4銘柄について、目標株価をまとめて引き上げた。
独ラインメタルは12日にドイツ国内で弾薬工場を建設する計画を公表。17日にはウクライナ企業と組んで同国に弾薬工場を建設することも公表した。独ベレンベルク銀行のアナリストチームは、受注加速に伴い「生産能力の増強も進んでいる」などと評価し、3月14日の決算発表を待たずしてラインメタルの目標株価を350ユーロから425ユーロへ上方修正した。
23年12月通期が前の期比で大幅増益になったと15日に公表した仏サフランは、決算と同時に増配計画も示した。ロールス・ロイスは22日、独MTUエアロ・エンジンズは29日と、関連企業の決算発表が予定される。業績の実績と見通しに加え、株主還元策にも関心が高まっている。