【QUICK Money World 辰巳 華世】日経平均株価が初の4万円台に到達するなど2024年は日本株にとって大きな節目となりました。この状況下で個人投資家はどう動いているのか? 気になる人も多いと思います。今回、QUICK Money Worldでは、会員の皆様に投資行動についてのアンケートを実施しました。
投資行動アンケートでは、投資全般について67の質問をしました。株式投資について、直近で購入した銘柄、今後購入したい銘柄、手放したくない銘柄、含み益・含み損が大きい銘柄など具体的な投資行動についても回答頂きました。
また新NISAについて、つみたて投資枠・成長投資枠の利用予定額や購入している具体的な銘柄について回答頂きました。株式投資のパフォーマンスや相場見通し・投資戦略など今後についても質問しました。
これから7回に分けて回答内容を紹介していきます。実際のところみんなは「どれくらい儲かっているのか?」「損しているのか?」聞きたくても中々聞けない個人投資家のパフォーマンスや、どういう銘柄を買っているのか、今後買いたい銘柄・手放したくない銘柄は何かなど、気になるところを一挙公開します。
今回の記事では、株式投資のスタンスや23年のパフォーマンス、24年のここまでのパフォーマンス、今後の投資戦略について紹介します。
QUICK Money World 投資行動アンケートについて
QUICKは、2024年4~5月にQUICK Money World会員向けに投資行動のアンケート調査をしました。アンケートの詳しい実施概要は記事の末尾をご覧ください。回答者の属性を確認すると、投資経験が長い40代以上が多いという特徴がありました。運用資産規模は1000万円以上の運用をしている投資家が多い印象です。
具体的には、40代以上が全体の93.4%を占め、投資経験は「10年以上」が最も多く57.6%でした。投資経験は3年以上が84%と、投資経験が豊富な個人投資家が回答者の多くを占めています。79.5%が兼業投資家でした。
(注)回答の比率は四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。
運用資産規模は59%が1000万円以上と回答しました。
株式投資のスタンス
株式投資のスタンスをテーマに、保有銘柄数や投資対象、投資戦略を聞きました。全体としては、ファンダメンタルズを意識しながら大型株を中心に中長期に運用するスタイルの投資家が多そうです。日経平均株価が4万円以上でも日本株の投資妙味があると考える投資家が70.3%おり、日本株への積極的な投資意欲を感じます。
具体的な株式(日本株・海外株含む)保有銘柄数は、選択肢のなかでは「1~5」銘柄が全体の22.6%と最も多くなりました。次に多かったのは「21~50」銘柄で21.4%、「11~20」銘柄が20.8%でした。「51~100」銘柄が7.1%、101銘柄以上は3.3%となり、株式を11銘柄以上保有している人が全体の52.6%と半数を超えています。保有銘柄が少数にとどまるケースもある一方、多くの銘柄に分散投資しながら、株式を積極的に購入している投資家が多いことがうかがえる結果となりました。株式投資対象は「大型株」「中型株」「小型株」の順で多かったです。メインの投資対象としては「大型株」と回答した人(215名)が最も多く、回答者の65.7%を占めました。
個別株式を買う際の基本的に想定する保有期間は「1~10年」と回答した人が約半数を占めました。10年を超える期間の回答も2割以上あり、短期的な売買というよりは、じっくりと保有する投資家が多そうです。
株式の基本的な投資戦略については「ファンダメンタルズ」「バリュー」「テクニカル」「グロース」の順でした。最もメインの投資戦略としては「ファンダメンタルズ」と回答した人(123名)が37%と最も多かったです。
2023年の株式投資のパフォーマンス
2023年の株式投資のパフォーマンスについては、好調な株式相場の影響を受けて、多くの個人投資家が利益・含み益を出したようです。23年を振り返ると、東証株価指数(TOPIX)の年間上昇率は25%、日経平均株価は28%でした。全体の83.7%が「利益・含み益があった」と回答し、23年の株式投資のパフォーマンスは良かったようです。
アンケート回答者の23年の株式投資のパフォーマンスの平均は+21.36%でした。概ね相場上昇に近いパフォーマンスだったようです。中央値は20%でした。相場上昇以上の結果を出した投資家も多くいます。TOPIXをアウトパフォームした人は全体のおよそ3割、日経平均株価をアウトパフォームした人は約25%でした。
どの投資スタイルが最もパフォーマンスが良かったのか?
投資戦略と2023年のパフォーマンスをクロス集計すると、平均以上となる20%以上のパフォーマンスの割合が高かったのは、高い順に「需給」「ファンダメンタルズ」「グロース」でした。
一方、30%以上の高パフォーマンスの割合が高かったのは、高い順に「グロース」「需給」「ファンダメンタルズ」「イベント」でした。グロース、需給に重きを置いていることが、パフォーマンスの違いをもたらした可能性があります。
回答の母数が少ない影響もありますが、「需給」「イベント」と回答した人は全員プラスのパフォーマンスとなりました。また、「株主優待狙い」の戦略をとる人は比較的安定したパフォーマンスを確保していることが見て取れます。
2024年の株式投資のパフォーマンス
24年に入ると株式相場は一段と盛り上がりました。3月に日経平均が初の4万円台に到達しました。大発会で3万3193円で始まった日経平均は3月22日に4万0888円の史上最高値を付けるなど約23%上昇しました。3月まで好調に推移した日本株でしたが、4月に入ると下落に転じます。米利下げ期待の後退による米長期金利の上昇が世界的に株価の重荷となり、中東情勢の緊迫化など地政学リスクが高まったことも影響しました。4月の日経平均は月間で1963円安となり、下げ幅は22年9月以来1年7カ月ぶりの大きさとなりました。
24年のこれまでの株式投資のパフォーマンスについて聞いたところ、24年初から24年4月末近辺のパフォーマンスの平均値は+9.2%でした。中央値は10%です。
回答時期が4月末ということで、日経平均が大きく下げた局面での回答となったのでパフォーマンスがやや低調になったようです。それでも、「利益・含み益がある」と回答した人が全体の74.2%と高い水準でした。一方、「損失・含み損がある」と回答した人は18.1%でした。
次回の記事では、具体的な含み益、含み損の大きい銘柄の回答をランキングで紹介する予定です。
今後の投資戦略
今後の投資戦略についても聞きました。回答から積極的に日本株に投資したいスタンスがうかがえます。
今後比率を高めたい商品は「株式」
今後の投資方針として、比率を高めたい商品としては62.3%の方が「株式」と回答しています。理由としては「上昇期待、成長期待がある」「NISA枠は課税優遇がある」「配当や株主優待がある」「インフレに強い」「投資対象の情報が比較的取りやすい」といった声が多く寄せられました。
投資信託やETF(上場投資信託)への関心も高いです。投資信託は38%、ETFは25.8%の人が比率を高めたいとしています。投資信託については、「分散投資ができて低コスト」、「手間なく運用できる」、「長期・積み立て・分散投資」ができる点を挙げています。ETFは「投資信託より⼿数料が安い、信託⼿数料が格安設定されている」、「ベトナム‧インドネシアの投資に有効な⽅法」などが理由でした。
債券は10.4%の人が比率を高めたいと回答しました。「金利上昇見込みのため」、「安定している」などの回答がありました。
貴金属(金・プラチナ等)も16%の人が比率を高めたいと回答。他の資産と併せて選択している人が多かったです。「債券や金でリスクヘッジ」との回答がありました。
投資信託・ETFで、比率を高めたいのは「日本株」と「米国株」
投資信託・ETFの選択において比率を高めたいのは、46.6%が「日本株」、44.5%が「米国株」でした。日本株を選ぶ理由としては、「インフレ」や「NISA活用」の声がありました。米国株については、「成長性」「値上がり期待」「米国のテクノロジーに集中投資する」などがありました。
「新興国株」との回答は19%でした。「成長期待」や「分散投資」を理由に挙げる投資家がいました。
今後の投資方針
自由記述形式で聞いた今後の投資方針については、NISAをキーワードとしている回答が多くみられました。「NISA枠の利用」、「NISA中心」「NISA枠を使い切る」、「新NISAの売却後の枠の復活をうまく活用しながら、NISA枠での投資を活かす」などの回答がありました。24年に新しくスタートしたNISAを上手に使って資産運用する投資家が多そうです。
日本株への投資意欲は高そうです。「日本株の上昇に期待し、注視している」、「日本株式が安くなるのを今は待っている」、「成長が見込めそうな企業に投資したい」、「日本株の買い増し」との回答がありました。
また、「AI」をテーマにしたい投資家も目立ちました。「AIをもう少し研究したいです」との回答が寄せられるなど、テーマとしての注目度が高いです。
まとめ
今回のアンケートから、回答をいただいた多くの個人投資家が株式投資の比率を高めたいと考えていることがわかりました。中でも「日経平均が4万円以上でも投資妙味がある」と考える投資家が70%を超えており、日本株への関心の高さがうかがえます。ファンダメンタルズを意識しながら、大型株を中心に中長期投資に取り組む投資家が多かったです。次の記事では、回答者が具体的に買っている銘柄のランキングを紹介します。
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<QUICK Money World投資行動アンケート2024実施概要> 調査期間:2024年4月19日~2024年5月6日 調査対象:QUICK Money Worldメルマガ受信会員 調査方法:アンケート依頼DMを配信、アンケートフォーム入力による回答 有効回答:回収数353件、うち重複を除いた有効回答337件 |