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FIRE vs. 分散投資:書店で思ったこと(フィデリティ投信、重見吉徳)

記事公開日 2024/6/12 16:00 最終更新日 2024/6/12 16:00 投資信託 フィデリティ 国内景気

最近、本屋さんに足を運びますと、目立つところに、資産運用に関する本が山積みにされています。当たり前かもしれませんが、「売れるので、目立つ場所に置いている」のでしょう。

そうした資産運用の本には、銘柄選択を指南する本が少なくないと思います。

反対に、「時間と資産の分散が大事」と言えば、それ一行で終わってしまうわけですから、本になりません(→ただし、ご存じのとおり、たった一行の主張を書籍として成立させるために、つらつらと書いてあるものがたくさんあります)。

筆者の勝手な想像ですが、銘柄選択を指南する本や雑誌が売れているということは、個人投資家のみなさまのなかは、「(時間と資産の分散投資が基本と熟知されたうえで、それでも)銘柄選択で大きなリターンを得たい」と思われる方が少なくないのかなと感じます。

言い換えれば、個人投資家のみなさまの中には、「分散と高いリターンという相反する欲求」があるのではないかと想像します。

実際、個人投資家のみなさまは日ごろ、SNSや雑誌などで、「FIRE(≒早期リタイア)達成」なるプロフィールをたくさん見ていらっしゃるでしょうから、そうした人たちの成功が、高いリターンやFIREを目指す心理に火をつけても全く不思議ではありません。

私も正直FIREしたい・・・。

FIREした人たちをみて、筆者も正直、うらやましいと思います。筆者の場合、いのちが続くかぎり、どこかに職場を求めて、少なくとも70歳あたりまでは働かないといけないと覚悟しています(→これが筆者の現実です)。

企業は労働者を搾取するものですし、コーポレート・ガバナンス改革や、環境や多様性などのグローバルなアジェンダの取り込みが進めば、搾取や所得格差拡大の傾向は今後、ますます強まるでしょう。

加えて、政府・財務省は財政のひっ迫を強調し続けるでしょうから、それが引き続き、消費への心理的な重しとなり、なおかつ、各種の税金や社会保険料のみならず、電気料金の値上げなどの「ステルス増税」で、実質可処分所得の見通しは明るくないでしょう。

そうした感覚がまた、「FIREへの欲求」を強めるかもしれません(→加えて言えば、われわれがいま失いつつあるものは、「購買力」といった金銭面だけでは決してないでしょう)。

日本の実質賃金指数

本業の仕事をつづけながら、FIREに近づくためには

本業の仕事も続けながら、週末は好きなことをやったり、自己研鑽をしたりしながら、「ある程度、分散をしつつ、高いリターンを得る」にはどうすればよいか。

筆者は、「アクティブ運用の投資信託が、その役割を担うべき」と感じています。

「べき」としたのは、すべてのアクティブ運用の投資信託が、それができるわけではないためです。金融市場は「ゼロ・サム」ですから、負ける人が存在することで、勝てる人は存在できます。

他方で、確率で考えると(=偶然と能力はランダムに分布しているはずですから)、高い運用成績を残すことができる個人投資家が存在するということは、高い運用成績を残すことができる、投資信託のポートフォリオ・マネージャーが存在するということを意味します。

偶然と能力がランダムに分布しているにも関わらず、個人だと高い運用成績が出せるが、プロである、投資信託のポートフォリオ・マネージャーだとそれができないという事実があるとすれば、その原因として、たとえば、次の点が挙げられるでしょう。

すなわち、

  1. 実際には運用に向かない。あるいは、運用の能力を引き上げるための、アドバイザーやトレーニングなどのサポートがない、
  2. 自己資金の少なくない部分を自分が運用するファンドに入れておらず、「身を賭していない」、
  3. (運用ガイドラインの制約で)ポートフォリオの構成をインデックスの構成から大きくかい離させることができない、
  4. (上場企業であり、その経営陣が『四半期主義』に陥っている場合)比較的安定した運用が求められ、ポートフォリオの構成をインデックスの構成から大きくかい離させることができない、
  5. (たとえ上場していなくても、あるいは、経営陣が『四半期主義』に陥っていなくとも)ポートフォリオ・マネージャーが、①インデックスに大きく負けてしまうリスクを恐れて、もしくは、②運用当初のアウトパフォーマンスを死守するために、ポートフォリオの構成をインデックスの構成から大きくかい離させることができない、

といった点です。

こうした投資信託の場合、保有期間がたとえ長期間だとしても、パフォーマンスがインデックスよりも劣る場合があるでしょう。

継続できるアクティブ運用の投資信託を選ぶ

われわれがFIREに近づけてくれる可能性があるアクティブ運用の投資信託を選ぶための、ひとつのシンプルな方法は、

  1. パフォーマンスがインデックスを大きく上回っていて、なおかつ、
  2. パフォーマンスに比較的大きな振れがある、

かどうかを確認することでしょう。

強調すれば、これら2つの要素は、決して、今後のパフォーマンスも良好であることを保証しません。あくまで、ある投資信託が高いパフォーマンスを出すための必要条件を持っているだけです(→繰り返しますが、 十分条件ではありません)。

仮に、そうした投資信託がいくつか見つかった場合、どれに投資をするかは、「その投資信託の運用者や運用会社の運用哲学・スタイルが好きかどうかで判断する」のがひとつの方法だと筆者は思います。

好きでないと、信頼も投資も続きません。アクティブ運用には紆余曲折があるためです。

投資信託のメリットのひとつは、少額で分散投資が可能であるという点です。

投資信託をつかって、分散のメリットを生かしつつ、しかも、FIREに近づくことを狙うには、「自分が好きになれる運用者/運用会社のアクティブ型投資信託」を選ぶことが一案でしょう。

(運用会社や運用者は、みずからの哲学とスタイルをしっかりと示すべきでしょう。もちろん「パフォーマンスがすべて」ですが、(スポーツとは違って、お客さまは「プレー」をじっと見てくれるわけではないため)「どうやってプレーしたか」「なぜそうプレーしたか」をわかりやすく見せることが大事です。)

 


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著者名

フィデリティ・インスティテュート マクロストラテジスト 重見 吉徳

20208月、フィデリティ投信入社。農林中央金庫や野村アセットマネジメントにて外国債券の運用に従事。アール・ビー・エス証券にて外国債券ストラテジストを務めた後、2013年に J.P.モルガン・アセット・マネジメントに入社。個人投資家や金融機関、機関投資家向けに経済や金融市場の情報提供を担う。昭和の歌が好き(演歌・洋楽を含む)。


投資経験 10年以上
投資商品
国内株式 投資信託

 SNSなどで見かける「インデックス投資でFIRE生活」だけれど、そんなのは成立しない。インデックスは市場の平均であって、上記生活が成立するというのは、すなわち、全ての人は平均的に不労所得のみで生活できるということになる。けれども、働かない人たちの生活は誰かが働いて維持しないといけない。これは明らかに矛盾だ。働かないのが勝者ならばその裏には敗者があり、すなわち、本文の「アクティブ」ということになる。  なお、「高い運用成績を残すことができる個人投資家が存在するということは、高い運用成績を残すことができる、投資信託のポートフォリオ・マネージャーが存在する」ことには一部同意しない。というのも、個人とファンドではリターンが生じるメソッドが異なる場合があり、例えばマーケットインパクトや非流動性のリスクがある銘柄をあえて拾うことでプレミアムを獲得する手法で、これはファンドではなかなか手が出せないだろう(波物語みたいなファンドもあるといえばあるが…)。

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2024/6/12 21:42

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