外為相場や株式市場の不安定な動きを受け、日銀は次の利上げを急がないとの見方が市場で強まっている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した8月の月次調査<外為>では、次の利上げを12月以降とみる回答が計76%と大勢を占めた。
調査期間中の7日午前に伝わった、日銀の内田真一副総裁による「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」との発言も影響したようだ。
もっとも、具体的な時期については市場の見方が揺れている。次の利上げは「来年以降」との回答が46%と最多の一方、年内の利上げ回数を聞いた別の質問に対しては「1回」が51%で最も多く、「年内は実施しない」は46%で次点となった。
住友商事グローバルリサーチの鈴木将之氏は「相場がいつ、どの水準で落ち着くのか、まだ不透明感が強い」としたうえで「次の利上げは年内なら12月、不安定な相場が続けば来年に持ち越しもあり得る」とみる。
国内外の政治・経済情勢も先行き不透明感につながる。東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹氏は「米国で年内に米連邦準備理事会(FRB)の利下げや米大統領選を控える。日本も実質賃金がようやくプラスになった程度の経済状況で、利上げは当面難しい」と見通す。
日銀が最終的に政策金利を引き上げる水準も見方が割れた。「1.0%」の28%に続き、「0.5%」と「0.25%(現状の水準)」が26%ずつで拮抗した。
一方、FRBの利下げ開始は、次回会合の「9月」が94%と大多数を占めた。年内の利下げ回数は「2回」が59%で最多だった。今回の利下げ局面で政策金利は現状の5.25~5.50%から最終的に「3.0~3.25%」になるとの見方が31%、「3.25~3.5%」が25%と、3%台前半とみる向きが半数を超えた。
11月の米大統領選の外為相場への影響は、勝者によって見方が分かれた。トランプ前大統領の場合は「円高・ドル安」が42%と、「円安・ドル高」の35%を上回った。ハリス副大統領の場合は「あまり影響はない」が68%と大勢だった。
円相場は、年内に円高が最大「1ドル=135~140円」まで進むとの見方が55%と過半数に達した。T&Dアセットマネジメントの浪岡宏氏は「利上げ局面にあるため、基本的には円高方向に進む」とみたうえで「(実績値を集計した)『ハードデータ』に着目すると、米景気の急激な悪化による大幅な米利下げ観測の高まりは考えづらい」と1ドル=135~140円で落ち着くとの見通しを示した。
調査は8月5~7日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者70人が回答した。