衆議院選挙が10月27日に投開票されます。国政選挙は金融市場と切っても切れない関係にあり、選挙結果を受けて、金融市場はどう動くのか注目されます。この記事では、QUICK Money Worldの関連記事を中心に2024年の衆院選と金融市場の動きを解説します。
(2024/10/25更新) 関連リンクに最新記事を追加しました
2024年の衆院選はいつ?
10月9日に石破茂首相は衆議院を解散しました。総選挙は10月15日公示、10月27日投開票の日程で行われます。
選挙結果はどうなる?
10月の第2週に実施したQUICKの市場関係者へのアンケート調査では、衆院選の結果について「現与野が過半数を確保する」との予想が最も多くなりました。
衆院選の結果を予想してもらったところ、「自民・公明の現与党で過半数を確保」が96人中47人(49%)で最も多くなりました。
しかし、投開票日が迫るにつれて、当初の予想とは異なるシナリオが浮かび上がってきました。10月21日、新聞社が実施した衆院選に関する情勢調査の結果を受けて、金融市場では『自公で過半数割れ』への警戒が広がりました。ある市場関係者は、下野は避けられたとしても、政局不安定化の懸念が残ると指摘します。
長年マーケットと政治を見てきた私としては1979年のいわゆる40日抗争を思い出してしまう。
衆院選の情勢調査、派閥抗争を連想で相場の重荷にも
衆院選で株価はどうなる?「選挙は買い」は本当か?
衆院選の前後で株価はどうなるのでしょうか。過去の衆院選前後の日経平均の推移を見てみましょう。
■衆院選直前の日経平均株価の推移
衆院選の投開票まで1カ月間(営業日ベース)の日経平均株価の推移を集計すると、2000年以降に実施された8回の選挙のうち、6回で上昇しています。
最も高い上昇率となったのは2009年(12.7%)です。民主党が大勝し政権交代が実現した選挙で、変革への期待が株価に表れました。2番目は2014年(11.7%)で、安倍晋三首相が消費税率引き上げ時期の延期や経済政策アベノミクスの継続の是非を問うとして突然解散し、自民党が圧勝しました。3番目の2017年(10.9%)も同様に安倍首相の下、自民が圧勝しています。
一方、株価が下落した2回のうち、下落率が大きかったのは前回の2021年(-5.3%)です。2年近くに及ぶ新型コロナウイルス感染拡大への対応、「成長と分配」をめぐる経済対策のあり方などが争点になりました。自民党は単独で国会を安定的に運営するための「絶対安定多数」の261議席を確保したものの、議席数は減らしました。
■衆院選後の日経平均株価の推移
衆院選が終わってから1カ月間の日経平均株価の推移を集計すると、期待が先行する選挙前と異なり、8回中、半数の4回は結果を受けて株価が下落しています。
最も高い上昇率となったのは、自民党が政権を奪還した2012年(15.6%)の選挙です。選挙後、5年3カ月ぶりに返り咲きを果たした安倍首相のアベノミクスと、日銀の黒田東彦総裁が打ち出した異次元の金融緩和に支えられ、株価はこの後も上昇基調をたどりました。
一方、下落率が最も大きかったのは2000年(-5.7%)です。急逝した小渕恵三首相に代わり森喜朗内閣が発足しましたが、「神の国発言」などで衆院解散に追い込まれました。結果は自民党の敗北です。2番目の09年(-2.8%)は民主党が大勝して政権交代が実現しましたが、選挙前の株高と対照的に、選挙後はさえない展開となりました。3番目の03年(-2.4%)も民主党が躍進し、自民党は議席を減らしています。
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QUICKの市場関係者へのアンケート調査では、日本株の動きについては「上がる」と「下がる」で見方が分かれています。
選挙の結果を受けた日本株の動きについては、見方が分かれました。「上がる」と「横ばい」がともに34人(35%)で比較的多い回答でしたが、「下がる」(28人、29%)も絶対数は少なくありません。
トレーダーやファンドマネジャーといったプロの市場関係者からQUICK Market Eyesが毎週末に生声を拾う名物コーナー「来週の展望」。25日に公開した調査結果では、27日投開票の衆院選を受けての波乱を警戒する声が広がりました。
(リンク先の記事「来週の展望」では、こちらで引用した声以外にも、20名超の市場関係者の生の声をご覧いただけます)
「衆院選に向けてショートが入っていると思われ、一旦買い戻しが入るのでは?(邦銀)」
「衆院選はいずれの結果でも、今後の不透明感を考慮すると株式への上昇余地が大きくないように見えます。日銀会合は波乱なしと思いますが(国内運用機関)」
「これまでは円安=株高だったが、152円まで円安ドル高が進みながらも株安が続いているところをみると、相場環境が変調しているように思える。日経平均、TOPIXが11営業日連続の陰線を記録するなど戻り売り圧力が強く、日経VIが30超まで上昇するなど投資家心理の悪化もうかがえる。……(国内証券)」
衆院選で為替はどうなる?
9月27日の自民党総裁選の結果発表後は、円相場が対ドルで急伸しました。10月の衆院選後に為替はどうなるのか、注目されています。
27日の東京外国為替市場で円相場が急伸した。16時すぎに1ドル=142円台後半まで買われ、急伸前の安値の146円49銭近辺からの上げ幅は一気に3円50銭程度に達した。
2000年以降、解散から総選挙投開票までのドル円相場は、円高・円安が4回ずつとなっており、為替にはアノマリー的にな法則性はありません。
00年以降、解散当日から総選挙投開票の前営業日までの円相場を振り返ると、全8回のうち円高に動いたのが4回、円安に動いたのが4回だった。「選挙は買い」のアノマリー(経験則)をもつ株式市場では日経平均株価が8回連続で上昇している一方、為替にはアノマリー的な法則性はない。
QUICKの市場関係者へのアンケート調査で、選挙後のドル円相場については円安がやや優勢となりました。
円・ドル相場の予想は、円安がやや優勢でした。「円安が進む」が41人(43%)で最も多くなりました。「横ばい」(37人、39%)がこれに続き、「円高に進む」(18人、19%)を上回りました。
トレーダーやファンドマネジャーといったプロの市場関係者からQUICK Market Eyesが毎週末に生声を拾う名物コーナー「来週の展望」。25日に公開した調査結果では、円高リスクが後退している現状を踏まえたコメントが複数ありました。
(リンク先の記事「来週の展望」では、こちらで引用した声以外にも、20名超の市場関係者の生の声をご覧いただけます)
「衆院選の結果で大きく株価は変動しそうだが、円高リスクが後退しているので、下値リスクは限定的だろう。…(国内証券)」
「衆院選と米大統領選に加え、日米ともに決算発表が本格化するため、積極的な買いが入りにくい。当面は上値が重たいだろうが、円高リスクが後退していることで、売り圧力も大きくなりにくい。米大統領選挙と決算発表が終わるまでは、方向感が出にくいだろう(国内証券)」
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