米大統領選での共和党のトランプ氏の勝利を受け、外国為替市場ではインフレ再燃への警戒が強まっている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した11月の月次調査<外為>では、トランプ氏の政策で為替相場に影響を与えるのは「輸入関税の引き上げ」と回答した市場関係者が70%に上った。次点の「トランプ減税の延長・強化」(40%)や「ドル高是正の口先介入」(34%)を大きく上回る。
トランプ氏はドル高を問題視する姿勢を鮮明にしている。しかし関税引き上げをはじめ、トランプ氏の掲げる政策はインフレ圧力につながるとの見方が多い。トランプ氏の優勢が伝わるにつれて進んだ「トランプ・トレード」では、米金利の上昇に伴いむしろ円安・ドル高が進んだ。外為市場では、トランプ氏のドル安志向よりも、実際の政策が為替相場に大きな影響を及ぼすとみている。
もっとも当面の為替相場の方向感は定まっていない。2024年末時点の円ドル相場予想について聞いたところ、調査期間の相場と同水準の「1㌦=150~155円」が38%と最も多く、「145~150円」が34%で続いた。トランプ氏の優勢や勝利を受けてすでに円安・ドル高が急速に進行したこともあり、一段の円安余地は限定的と考える向きが優勢なようだ。一方、さらなる円安進行を予想する専門家もいる。「155~160円」との回答は26%だった。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、外為市場の予想について「トランプ氏の政策は財政悪化をもたらすため、悪い金利上昇につながるという見方がある」と指摘する。日銀の金融引き締め方向の政策姿勢も相まって、中長期的には現状のドル高・円安圧力は弱まっていくとの見立てだ。また年末にかけてドル安・円高が進みやすい季節性も意識されている可能性があるという。
FRBは利下げ減速の観測
トランプ政権の再来は米金融政策にも影響しそうだ。米国の政権交代による米連邦準備理事会(FRB)の当面の金融政策への影響を聞いたところ、「利下げペースの減速」と「利下げの継続(影響なし)」の回答がともに43%だった。
政策金利の最終到達点(ターミナルレート)の予想の変化は一層明らかだ。今回の利下げ局面でFRBがどこまで金利を引き下げるかについて、0.25%刻みで聞いた選択肢のなかでは「3.5~3.75%」との回答が23%と最多だった。FRBがドットチャート(政策金利見通し)で示した長期の政策金利(2.875%)を大きく上回る。また、市場関係者の見方は割れており、3割超の市場関係者が4%台での利下げ打ち止めを見込んでいる。
トランプ氏は金融政策においてはむしろ利下げを強く志向する立場だ。しかし政策のもたらすインフレ懸念が、早期の利下げ停止をもたらすとの見方が外為市場では優勢となっている。
調査は11月11~13日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者73人が回答した。
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