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トランプ大統領で株価・為替はどうなる? トランプ・トレードの行方をチェック!

【QUICK Money World 荒木 朋】2024年11月5日に投開票が行われた米大統領選では、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が民主党候補で女性初の大統領を目指したカマラ・ハリス現副大統領を破り、第47代の米大統領に選出されることになりました。

第45代(2017~2021年)大統領だったトランプ氏は2期目の再選を目指した2020年の選挙で民主党のジョー・バイデン氏に敗北。大統領返り咲きを目指した今回の選挙では、米大統領経験者として初めて複数の刑事訴訟を抱えたまま選挙当日を迎える異例の展開となりましたが、結果は圧勝。トランプ氏は2期目を目指した選挙で一度落選した後に返り咲きを果たした史上2人目の大統領となります。

2025年1月20日の大統領就任を前に世界の金融・株式市場は、トランプ氏が掲げる外交政策や金融・経済政策の思惑で取引を行う「トランプ・トレード」が活発になっています。本記事では、トランプ・トレードによる株価や為替動向を確認するとともに、大統領就任後の政治経済や先行きのマーケットの見方について解説していきます。

大統領選後の「トランプ・トレード」を振り返る!

2024年11月5日の米大統領選は、世論調査で示された戦前の接戦予想に反して、共和党候補のトランプ氏がペンシルバニア州やウィスコンシン州など大統領選の勝敗を左右するとされるスイングステート(揺れる州)と呼ばれる激戦州すべて制するなど、対抗馬の民主党候補ハリス氏を圧倒して4年ぶりの返り咲きを果たしました。

トランプ氏が掲げる政策は、法人税率の引き下げなどを柱とするトランプ減税の拡大・恒久化や規制緩和、「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」の旗印のもとで行うあらゆる国への関税引き上げ、厳格な不法移民対策の実行などです。トランプ政策のうち、減税や規制緩和などは景気回復につながり株価のプラス材料になると期待される半面、一連の景気刺激策や関税引き上げなどは物価の押し上げ要因になるとみられています。

こうした状況下、大統領選と同時に行われた米連邦議会選挙では上院、下院ともに共和党が過半数を確保し、大統領と上下両院を共和党がすべて押さえる「トリプルレッド」となりました。この選挙結果により、トランプ次期政権が目指すあらゆる政策の実現可能性が高まったとして、米国市場では初期反応として大幅な株価上昇と金利高を招く「トランプ・トレード」が活発になりました。

大統領選後の1週間の米株式市場ではダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数の主要3指数はそれぞれ3~4%高となり、米債券市場では米10年債利回りが4.2%台から4.4%台に上昇しました。ドル円相場は1ドル=152円台前半から154円台後半に円安・ドル高が進みました。日経平均株価も米株高と円安を追い風に上昇し、上昇率は2%超となりました。

株高を誘ったのはトランプ減税や規制緩和の推進による景気や企業業績のプラス寄与への期待です。一方、米長期金利は米連邦準備理事会(FRB)が9月以降、利下げ局面に転じたにも関わらず上昇する動きとなりました。これは、トランプ減税による景気浮揚に加え、関税引き上げなどによりインフレ圧力が高まり、今後のFRBが進める金融緩和政策の持続性に不透明感が高まったと警戒されたためです。

トランプ氏はもともと、米国経済にとってドル安が望ましいとの主張を繰り返しており、2024年に急激に進んだ円安・ドル高に対して「米国にとって大惨事だ」などと発言しています。また、不動産王として一時代を築いたトランプ氏は金融緩和(=利下げ)を強く求める傾向にあり、たびたび「FRBの金融政策決定に大統領が発言権を持つべきだ」などと主張しています。

 

トランプ氏の発言は「ドル安・利下げ」の志向が強いことを示唆していますが、トランプ次期政権が採ろうとする政策は結果としてインフレ懸念を強めかねません。そのため、金融市場でドル高・金利高が進むなど、トランプ氏の発言とマーケットの動きは必ずしも一致していない状況を生んでいます。

大統領選から1カ月後のマーケット動向をみると、株高が継続する一方で長期金利の上昇とドル高は一服するなどトランプ氏の目論見通りの展開となっていますが、中長期ではどうなるか引き続き注視していく必要があるでしょう。

トランプ次期大統領の誕生を受けて、最も盛り上がったマーケットは暗号資産(仮想通貨)でしょう。証券市場の規制監督機関である米証券取引委員会(SEC)は、これまで暗号資産に対して投資家保護などを目的に厳格な規制対象とする動きをみせていました。しかし、大統領選勝利を受けてトランプ氏は次期SEC委員長に過度な金融規制に否定的な規制緩和論者として知られる人物を任命。規制緩和が進めば暗号資産への投資が増えるとの期待が膨らみました。代表的な暗号資産の1つであるビットコインはトランプ氏勝利後の1カ月で4割以上上昇し、史上初めて10万ドルの大台に到達しました。

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トランプ大統領の就任で株価や為替はどうなる?

これまで大統領選でトランプ氏が勝利を収めた後の短期的なマーケット動向についてみてきましたが、2025年1月20日の大統領就任後の株価や為替などの動きは一体どうなるのでしょうか? このまま株高は続くのか、市場関係者が注目しているトランプ次期政権の政策をいくつか取り上げ、マーケットへの影響について点検していきましょう。

まずは市場参加者がトランプ次期政権のどの政策に注目しているのか確認しましょう。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した11月のQUICK月次調査<外為>によると、為替相場に影響するトランプ政策として、「輸入関税の引き上げ」と回答した市場関係者が70%に上りました。次に「企業・個人に対するトランプ減税の延長・強化」が40%で続きました。

輸入関税の引き上げに関してトランプ次期大統領は、2025年1月20日の就任後に中国からのほぼ全ての輸入品に10%の追加関税をかけると表明。メキシコとカナダにも就任初日に25%の関税を課す考えを示しています。前回のトランプ政権時には2018年7月に中国からの輸入品340億ドルに25%の制裁関税を適用。これに対し、中国も報復関税を実施しました。その後も両国の関税引き上げ合戦となり、米中貿易摩擦が激化し、世界の金融・株式市場に混乱を引き起こした経緯があります。今回も米中関係が悪化するようであれば、株価や為替への影響は避けられないとの見方があります。

トランプ氏は今回、不法移民対策などを問題視してメキシコとカナダにも関税を課すと表明しています。関税が実際に引き上げられると、米国の輸入業者などはその引き上げ分を販売価格に転嫁するとみられます。もしそうなれば価格上昇がインフレ圧力となるばかりか、米個人消費の抑制要因にもなりかねません。中国・メキシコ・カナダの3国の米国への輸入額シェアは全体の4割強に達しているとされます。実際に関税が引き上げられれば、個人消費の減速とインフレ加速のダブルパンチとなり、米国内総生産(GDP)を下押しするとともに、世界経済の成長率にも影を落とすことは避けられないとみられています。

仮に米経済が低迷する中でインフレ圧力にも目配りする必要性が高まれば、FRBの金融政策にも影響を及ぼすことは避けられないでしょう。FRBは2022年以降、政策金利を段階的に引き上げて年5.25~5.50%とした後、2024年9月に利下げ局面に移行。9月、11月、12月の金融政策決定会合で相次いで利下げを決定し、利下げ幅は合計1%に達しました。

FRBは景気減速に配慮した金融政策を今後も続ける見通しですが、インフレ懸念が足かせとなれば、利下げペースは減速する可能性が高まります。実際、先のQUICK月次調査<外為>11月調査では、米政権交代によるFRB政策の影響に関する質問で、「利下げペースの減速」につながると予想する市場関係者は4割強に上っていることが分かりました。

インフレ圧力による利下げペースの減速、さらには利下げ停止となれば、株価にはマイナス要因になりそうです。一方、外国為替市場はドル円相場でみれば日銀が利上げ局面にあることから過度の円安・ドル高は見込みにくいと考えられるものの、FRBの利下げペースが鈍化することになれば、ドル高圧力も一定程度強まることも予想されます。もっとも、トランプ氏はドル安志向とはいえ、大幅なドル高になるなど急激な変動とならない限り、FRBへの金融政策に過度に介入する可能性は低いといえそうです。

市場参加者が注目するもう1つの材料は「トランプ減税の拡大・恒久化」です。2017年の第一次トランプ政権時に法人税率を35%から21%に引き下げたものの、今回の勝利で一段の引き下げを主張。さらに一連の減税策の恒久化や社会保障の給付金への課税廃止など追加の減税策を推し進める考えを表明しています。また、暗号資産などを含む規制緩和の推進にも取り組む考えです。

大統領と上下両院を共和党が押さえる「トリプルレッド」の達成でトランプ政策の実現可能性は高いとみられており、減税や規制緩和は株式をはじめとするリスク性資産には単純にポジティブ材料と受け止められるでしょう。前回のトランプ政権時にも減税策などを実行し、株価を押し上げる原動力になったことは記憶に新しいところです。今回も景気浮揚や消費拡大への期待が株価を押し上げる要因になりそうです。

減税や規制緩和はポジティブ要因ですが、前述の通り、関税引き上げによるインフレ加速や個人消費の下押し懸念はマイナス要因となり得ます。関税引き上げに関しては、トランプ氏が米国民に公約実現をアピールする分かりやすい材料にするとともに、米国に有利な状況を作り出すために関税を交渉カードに使っているとの見方があり、全面的に関税引き上げが実施される可能性は低いと予想する専門家も少なくありません。減税・規制緩和の株価の押し上げ効果は、関税引き上げ政策の実施度合いに左右されるとみられます。

トランプ次期大統領が強化を検討する不法移民対策については、市場参加者の関心はさほど高くはありません。ただ、この問題がメキシコやカナダに対する関税引き上げを主張する根拠の1つになっていることもあり、無視することはできません。不法移民を強制送還することになれば、米労働市場の人手不足を引き起こす可能性があります。移民対策の強化は結果として賃金上昇などを含むインフレ圧力としてFRBの金融政策に影響を及ぼす恐れもあります。こうした負の影響を踏まえ、ビジネスマンでもあるトランプ氏が自身の公約実現と景気配慮のバランスの落としどころをどう見つけるかが注目点になりそうです。

トランプ次期大統領の政策は株価や為替にとってプラスとマイナスの材料が混在しています。ただ、少なくとも株安を容認するとは考えにくく、減税や規制緩和による株価のプラス材料を下支え役として、関税引き上げなどの外交政策を巧みに操りながらマーケット全体の安定を図ろうとするのではないでしょうか。いずれにせよ、米中貿易摩擦の激化や経済環境の激変などにより、一時的に相場変動(ボラティリティー)が大きくなるリスクについては覚悟しておく必要があるかもしれません。

 

トランプ氏の日々の動向にも注目!

トランプ次期大統領の発言はマーケットに与える影響は少なくないため、2025年1月20日の大統領就任前も就任後も常に注目する必要があります。留意すべきなのは、いわゆるオールドメディアといわれる新聞やテレビ、ラジオなど旧来のメディアや報道機関から発信されるニュースだけに頼るのはリスクがあるという点です。

トランプ氏はX(旧ツイッター)などのSNSを駆使して情報発信することで知られています。以前であればテレビ演説や記者会見などを通じて重要な政策について発言することが通常でしたが、いまではそれよりも先にSNSで自ら全世界に向けて発信することが増えています。実際、前述した中国への追加関税やメキシコ・カナダへの関税を課す意向を示したのは、トランプ氏自身が設立したSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿でした。

トランプ氏は中国に対して「私は大量の麻薬、とりわけ合成麻薬フェンタニルの米国への流入について何度も話し合ってきたが無駄だった。中国の代表は麻薬の売人に対して最高刑を課すと話したが何も実行していない。麻薬の流入を止めるまで、米国に輸入される中国の全製品に10%の関税を課し続ける!」と指摘。メキシコとカナダに対しては、「メキシコ・カナダ経由で数千人もの人々が米国に流れ込み、かつてない水準の犯罪と麻薬を運び込んでいる」などと批判。そのうえで「麻薬、特にフェンタニルとすべての不法移民の流入を止めない限り課税を課し続ける!」などと投稿しました。

日本に関連した投稿では、2023年12月に日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールの買収を発表したことに関して度々、自身の考えを投稿しています。2024年12月にはトゥルース・ソーシャルに「かつて偉大だったUSスチールが日本製鉄に買収されることに完全に反対だ。私は大統領としてこの買収を阻止する」と投稿し、日本製鉄によるUSスチールの買収を認めない意向を改めて表明しました。

前回のトランプ政権時にも、重要な外交方針や経済方針などについてSNSを通じて突如発表し、いわゆる「トランプ砲」がマーケットを大きく動かす材料になったことが過去にも何度かあったことは記憶に新しいところです。今後もトランプ氏はSNSを駆使した情報発信を繰り返すことが予想されます。SNSについては、投資家は自分でも情報をいち早く得ることができます。トランプ砲はマーケットの変動要因になる可能性が高いということを念頭において、特に東京市場の取引時間帯でマーケットが動いた際にはトランプ氏の投稿内容が手掛かりになったかどうかチェックすることも必要になるでしょう。

まとめ

2024年11月5日投開票の米大統領選で共和党のトランプ候補が勝利し、4年ぶりの返り咲きを果たしました。2025年1月20日の大統領就任に向けて、金融・株式市場ではトランプ氏の掲げる減税策や規制緩和、関税引き上げ、不法移民対策などの各政策への影響を見越して取引される「トランプ・トレード」が活発で、株価は上昇基調となっています。株高を中心とするトランプ・トレード継続の有無は、大統領就任後の各政策の実行度合いや景気に及ぼすプラスの影響がどの程度になるかがカギを握ります。トランプ氏はSNSを駆使して情報発信をするのも特徴で、重要な経済・外交方針を突如、SNS上に投稿する可能性もあります。米政治経済の行方はもちろん、トランプ氏の日々の情報発信にも目配りしてマーケット動向をチェックすることが重要となりそうです。

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著者名

QUICK Money World 荒木 朋

1998年にQUICKに入社。2003年から11年間、日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)で記者職に就く。0609年にNQNニューヨーク支局に駐在。1820年はQUICKロンドン支店に赴任。08年のリーマンショック、20年のBrexitはいずれも現地で取材した。QUICK退社後、ボクシングトレーナーとして働く傍ら、21年から「QUICK Money World」に寄稿。


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