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DeepSeekショック、注目すべきは「中国発」「低コスト」「オープンソース」 関連情報まとめ

記事公開日 2025/1/29 19:55 最終更新日 2025/1/29 20:13 中国・韓国・アジア 米国・欧州 中国 米株 米政治 半導体関連株

※ページ下部に、影響を受けた銘柄ほか関連リンクあり

【QUICK Money World】中国のAI企業DeepSeekは2025年1月、最新AIモデル「DeepSeek-R1」を発表した。このモデルはOpenAIの「ChatGPT-o1」と同等以上の性能を持つと言われる。米国市場では27日、半導体株や電力株が軒並み下落した。筆頭格のエヌビディア(NVIDIA、ティッカーNVDA)は前日比16.9%の大幅安となった。日本市場でも同日、フジクラ(5803)アドバンテスト(6857)など生成AI向け投資で恩恵を受けるとされる銘柄の下落が目立った。市場での反応を受けて、ソーシャルメディア「X」などでは一時、「DeepSeekショック」がトレンドに入った。

DeepSeekの登場を金融業界やテック業界が驚きを持って受け止めたのは、その性能の高さだけではない。下記の3点について、大きな反響があったと言える。

■ 「中国発」ということ

生成AIの開発では、「ChatGPT」の開発元であるOpenAIやMicrosoftなどの米国企業がリードすると言われる。特にOpenAIの最新モデル「o1」では推論力が向上、「東大入試の数学問題で正答する」など、性能の高さが話題となった。

今回発表のDeepSeek-R1はo1と同等の性能があると言われ、テック業界では「同じく東大入試で正答する」「一部ベンチマークではo1を上回る」などの報告が挙がった。

これほどのAIモデルを中国のスタートアップが開発したという事実は今後、米中のAI開発競争が激化する可能性を示唆している。「生成AI発展で最大の恩恵を受けるのはアメリカ企業」という前提にも影響するだろう。

中国企業は現在、前バイデン政権が実施したチップの輸出禁止により、最新GPUを購入することができない。GPUはAIの性能を左右すると言われ、同国でのAI開発において大きな制約を受けている。DeepSeekでは、規制対象である最新GPU「H100」を使わずに、対象外の型落ちGPU「H800」を約2000個使用してR1を開発したと表明している。真偽はさておき、規制の影響を受けることなくAIを開発したことが明らかとなった。この事実は、現在のGPU争奪戦に一石を投じる可能性があり、生成AI向け出荷で9割のシェアを占めると言われるエヌビディアの死角となる恐れがある。

■「低コスト」ということ

AI開発では「スケーリング則」という経験則が合致すると言われている。「AIの性能はGPUほか計算リソースと学習データの量に比例して向上する」という法則で、リソースを増やせば性能向上が見込まれる一方、そのためには大量の資本を投じなければならないことも示唆している。この法則に従えば、AI開発でトップに立てるのは大規模な初期投資が可能な一部の巨大企業に絞られることになる。例えば、OpenAIはChatGPTの開発にこれまで数億ドルを投じたと言われ、今後の時期モデルの開発に数十億ドルかかることを明らかにしている。

今回、DeepSeekはR1の開発に560万ドル(約8億6000万円)を投じたという。これは、従来の開発費用の10分の1以下であり、上記のChatGPTと比較すると100分の1以下でもある。巨大企業でなくともAI開発が可能であることが分かれば、今後スタートアップなどによる開発競争が進み、AIの発展に寄与するだろう。

■「オープンソース」ということ

DeepSeek R1はMITライセンスによりオープンソース化されている。これにより、AI開発者は誰でも、ソースコードのダウンロードやローカル環境でのインストールなどが可能である。また、派生モデルの公開も可能であり、例えば、サイバーエージェント(4751)は27日、R1をベースに日本語データで追加学習を実施したモデルを公開した。

オープンソースのメリットとして例えば、多数の技術者がコミュニティーに参加することで、開発スピードの向上が見込まれることがある。一方で、企業が持つ最先端の技術や手の内を公開することを意味しており、優位性が失われる恐れもある。

DeepSeekをオープンソースとした真意は測りかねるものの、あわせて、学習手法などの技術論文も公開されており、これら情報には誰でもアクセスできる。上記の低コスト化もあいまって、スタートアップほか中小企業によるAI開発や、エッジAI(端末に直接搭載するAI)の開発に貢献することが期待される。

■新たな米中対立の懸念も

上記の通り、DeepSeekは半導体規制の制約があるにもかかわらず、低コストでの開発を実現したと主張する。そもそも、バイデン政権による半導体規制は、最先端の技術流出や軍事転用などのリスクを危惧しての政策であり、DeepSeekについての報道では、その効果に疑義を呈するところもある。

また、アメリカの安全保障に対する懸念についての言及も出始めた。米CBSニュースはサイトにて、「DeepSeekに1989年の天安門事件を入力したところ、何も応答しなかった」ことを明かした。同社の報道によると、米下院議員のジョン・ムレーナー氏はSNSにて、DeepSeekのようなモデルは「国家安全保障の脅威となる」としたうえで、「AIインフラに不可欠な技術に対する輸出規制を強化しなければならない」と述べた。

また、トランプ米政権で仮想通貨とAI政策を担当するデービッド・サックス氏は米FOXニュースのインタビューで、DeepSeekのAIについて「OpenAIのモデルから知識を蒸留したとの確固たる証拠がある」と述べた。

これらの意見が高まれば、中国への更なる規制強化や中国製AIの利用制限に発展する可能性がある。今後、しばらくはアメリカの要人発言に注意すべきであろう。

■関連情報・リンク

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著者名

QUICK Money World 玉井 純


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