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春闘とは? 仕組みや賃上げの動向、株式相場への影響をわかりやすく解説(資産形成イロハのイ)

記事公開日 2025/2/20 16:30 最終更新日 2025/2/20 16:30 経済・ビジネス コラム・インタビュー 国内景気 資産形成イロハのイ 金融コラム

【QUICK Money World 辰巳 華世】春季労使交渉「春闘」って何だか分かりますか?足元で急速に物価上昇が進む中、お給料が上がるのかどうか!?会社員にとっては最大の関心事だと思います。春が近づく2月あたりからよくニュースで耳にする春闘は、みなさんのお給料の賃上げに関係するお話です。今回は春闘とは何かという基本的な説明とその仕組み、春闘が個人のお給料だけでなく日本経済や日銀の金融政策にまで関係していることを解説します。

「春闘」とは?

春闘」は、労働組合が会社と 賃金や労働条件の改善について交渉を行うことです。労働者の生活の向上と労働環境の改善を目指しています。

労働組合とは、 労働者が主体となり結成する組織で、従業員の代表として会社側と労働条件の改善を目的としたさまざまな交渉にあたります。多くの労働者が集まり、団結することでより強い交渉力を持つことができます。労働組合は、賃金の向上や労働時間の改善、職場環境の安全確保など労働条件の改善を求めて活動します。

労働組合はすべての企業に必ずあるわけではありません。労働組合を作るかどうかは、その企業で働く労働者次第です。一般的に大企業には労働組合がある傾向があります。

労働組合は労働者が団結して結成する組織です。企業と労働者の関係は一般的に「雇用主と従業員」という力関係にあります。そのため、労働者一人ひとりでは雇用主との交渉が難しいです。労働者が団結し、労働組合を通じて交渉することで、 より交渉力を高めることができます

春闘では賃上げが注目されがちですが、労働組合が会社側と交渉する内容はそれだけではありません。労働条件に関するさまざまな問題が話し合われます。例えば、労働時間の短縮、休暇制度や福利厚生の充実、安全対策の向上、非正規雇用の待遇改善、テレワークやフレックスタイム制の導入など労働環境に関して多岐に渡ります。最近は人手不足解消や人材確保に向けて新入社員の初任給引き上げが話題となることも多くなりましたが、若手に比べ中堅以上が賃金で不利益を受けないよう、「世代間格差」の是正に取り組むことが労組の新たな課題に浮上しています。

 

春闘はどんな風に進むの?

2月くらいになるとニュースなどで「春闘」の話題が増えます。これは、労働組合が企業に要求を出すのが 2月企業からの回答が 3月頃であるためです。 3月が春闘のヤマ場と言えますが、実際には1年ほどかけて準備が進められています。

労働者は会社側と円滑に交渉をするために団結して労働組合を作ります。労働者が一人で頑張るより労働組合で団結した方が交渉力が増すように、労働組合でも同じ様な仕組みがあります。

多くの労働組合が加盟する日本最大の労働組合の全国組織があります。労働組合のナショナルセンター(全国中央組織)の「連合」は、産業ごとの労働組合をまとめ、労働政策や賃金交渉の指針を決定します。また、各産業ごとに企業単位の労働組合を統括し、賃上げや労働条件の統一要求を行う産業別組織があります。それぞれの企業の労働組合が単独で頑張るより、個々の労働組合をまとめて活動することで情報共有や連携を図ります。

連合では、前年8月頃から検討を始め、 12月上旬 に春闘の全体方針を発表します。その後、各産業別組織が全体方針に基づいて具体的な要求水準を決定し、それに沿ってそれぞれの労働組合が企業側に提出する要求をまとめます。産業別組織は、春闘のスケジュール調整を担当します。労働組合からの要求提出日や企業からの回答日など具体的に調整します。経営者は同業他社の動向を意識する傾向があり、労働条件についてもほかの会社と足並みを揃えた回答をする傾向があるためです。

労働組合がすべての企業にあるわけではないので労働組合がない企業の労働者は春闘は関係ない話と感じるかもしれませんが、大企業の結果が中小企業の交渉に影響するため、春闘全体の流れを把握することが重要です。

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注目の「賃上げ」の仕組み

投資家や金融市場関係者が特に注目する「賃上げ」について、詳しく見ていきましょう。賃上げには主に「ベースアップ(ベア)」「定期昇給(定昇)」「一時金」の3つの形態があり、それぞれ特徴と目的が異なります。

ベースアップ(ベア)

全従業員の基本給を一律に引き上げることを指します。略して「ベア」とも呼ばれます。物価上昇への対応や賃金水準の改善を目的として行われ、賃金テーブル自体を改定するため、長期的な賃金水準の底上げにつながります。

定期昇給(定昇)

労働者の 勤続年数や年齢、業績評価に応じて 賃金が定期的に上がる仕組みです。企業によって昇給の頻度や基準は異なります。一般的には年1回や、半年ごとに昇給が行われます。

一時金

賞与やボーナスとして、特定の時期に一度だけ支給される金銭のことです。年収に与える影響は大きいものの、業績や経済状況により変動するため、安定性には欠けます。

春闘では、特に「ベア」が重視される傾向があります。それは、物価上昇や生活水準の向上に対応するため、賃金テーブル自体の引き上げが必要とされるからです。ベアは長期的な賃金水準の底上げにつながり、生活の安定や購買力の維持と向上に影響します。

2025年度の労働組合側の賃上げ要求では、連合はベアと定期昇給を合わせた賃上げの要求水準を5%以上」としています。特に中小労働組合は格差是正に向けて「6%以上」を目指すように促しています。

産業別組織では、観光産業のサービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)が、定昇分で2%、実質的な賃金改善(ベア)で4%の合計6%の賃上げを要求しています。

25年の春闘では大企業を中心に初任給や賃金の引き上げへの機運が高まっています。トヨタ自動車(7203)労働組合は、昨年同様の最高水準の賃上げ要求をする方針です。賃上げ要求額は、職種・職位ごとに月額9950〜2万4450円とします。要求額はベアと定昇分の合計で、昨年並みの水準です。また、年間一時金について基準内賃金の7.6カ月分を要求する方針です。大和ハウス工業(1925)は、正社員を対象にベアで月額9万2945円の昇給を4月から実施します。賃上げ率は23.5%、年収ベースでは平均約10%増となる見込みです。大東建託(1878)は4月から、ベアと定昇をあわせて約5%の賃上げを実施します。

このように、春闘では賃上げ率だけでなく、ベアや定昇、一時金などの前提が業界や企業によって異なります。

 

なぜ投資家からの注目度が高まっているのか?

投資家の間で春闘への注目が高まっています。その背景には、賃上げの動向が日本経済の鍵を握り、経済の強さや今後の日銀の金融政策を見極める上で賃金が重要な要素となっていることがあります。

日本経済は長年、デフレに苦しんできました。デフレ環境下では、消費者は、「もう少し待てばさらに安くなるのではないか」と現在の消費を控えようとするため購買意欲が低下します。その結果、企業の収益も圧迫されるため、経済成長が停滞します。この悪循環を断ち切るためには、賃金の上昇が不可欠です。賃金が上がることで、消費者の購買力が高まり、消費の拡大を通じて経済全体の活性化が期待できます。

ここ数年の賃金の伸び率は拡大傾向にあります。例えば、2023年の春闘では、連合の集計では賃上げ平均3.58%と29年ぶりの3%超でした。続く24年は、前年比1.52ポイント高い5.1%と、1991年以来33年ぶりに5%を上回っています。この賃上げの動きは、デフレからの脱却に向けた重要な一歩とされています。

日銀の金融政策を占ううえでも春闘は大切です。日銀は物価安定を目標に金融政策を運営しており、その判断材料として賃金動向を重視しています。春闘での賃上げ状況は、日銀が金融政策、特に利上げを検討する際の重要な指標となります。

日銀は1月24日まで開いた金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ「0.5%程度」としました。日銀が利上げに踏み切った判断材料の一つに賃上げモメンタム(勢い)があります。日銀の植田和男総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、政策判断として重視する賃上げモメンタム(勢い)について「昨年に続きしっかりした賃上げの実施が見込まれると判断した」としています。

多くの個別企業(ミクロ)で実質賃金の上昇が実現できれば、マクロでのプラス要因と考えることができます。

このように、春闘における賃上げ動向は、日本経済の現状先行き判断する上で重要な指標の一つです。賃金の上昇が持続的な経済成長と安定した金融環境をもたらすかどうか、今後の動向に注目が集まっています。

<関連記事>

まとめ

「春闘」は、労働組合が会社と賃金や労働条件の改善について交渉を行うことです。労働者の生活の向上と労働環境の改善を目指しています。25年の春闘では大企業を中心に初任給や賃金の引き上げへの機運が高まっています。25年度の労働組合側の賃上げ要求では、連合はベアと定期昇給を合わせた賃上げの要求水準を「5%以上」としています。特に中小労働組合は格差是正に向けて「6%以上」を目指すように促しています。

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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