資本コストは企業が事業を営むにあたって調達したコストを指し、このうち株主から調達したコストを「株主資本コスト」と呼びます。東京証券取引所が2023年3月に「資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応」を上場会社に対して要請し、資本コストや株主価値を意識した経営の重要性に関する企業経営者の認識が一段と高まっています。
株主資本コストを株主の立場から見ると、「出資額に対する期待するリターン(期待収益率、要求収益率)」と言えます。純利益を株主資本で除して求める「ROE(自己資本利益率)」が株主資本コストを上回れば、企業は価値を生み出していることを意味します。
株主資本コストは、いくつかの算出方法がありますが、QUICKはファクター・アプローチ、インプライド・アプローチを組み合わせて「QUICK株主資本コスト」を独自に算出しています。QUICK株主資本コストは、QUICKが個人投資家向けにサービスしている「Qr1 Personal」などで確認することができます。
▼「Qr1 Personal」で株主資本コストを見る方法
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QUICK株主資本コストはファクターモデルを使った「ファクターベース」と、株式価値評価モデルを使った「個別銘柄ベース」があり、それぞれに過去36か月の平準値と直近の情報で算出したスポット値がありますが、QUICK Money Worldでは、過去36か月分の平準値を掲載します。
今回は「電気機器」業種を取り上げ、2025年3月末時点の主要企業の株主資本コストを一覧にしました。
銘柄名(銘柄コード) | ファクター | 個別 | 乖離 |
---|---|---|---|
ソニーG(6758) | 9.99% | 8.09% | -1.90% |
日立(6501) | 10.49% | 9.45% | -1.04% |
パナソニックH(6752) | 11.04% | 11.95% | 0.91% |
三菱電(6503) | 10.90% | 7.94% | -2.96% |
キヤノン(7751) | 10.87% | 7.02% | -3.85% |
富士通(6702) | 8.83% | 7.99% | -0.84% |
NEC(6701) | 10.03% | 8.23% | -1.80% |
リコー(7752) | 11.86% | 9.17% | -2.69% |
ニデック(6594) | 9.46% | 6.30% | -3.16% |
シャープ(6753) | 11.01% | 10.16% | -0.85% |
平均 | 10.45% | 8.63% | -1.82% |
※各銘柄の株主資本コストは業種平均よりも高い場合を緑、低い場合を赤にした
投資判断の参考として、東証33業種をベースに、1業種をピックアップして業種の平均値と銘柄別の株主資本コストを掲載しました。業種別の要因が含まれているファクターベースと個別銘柄ベースの差は、その銘柄の個別材料に対する投資家の評価と言えます。個別銘柄ベースの株主資本コストが高い場合は、その銘柄のリスクが類似する企業と比べて高いと見られているサインです。