国内最大級のアートフェアである「アートフェア 東京」が3月7日(金)~9日(日)まで、東京国際フォーラムで開催された。総来場者は5.5万人を記録し、国内外からの集まった多くのアートファンを楽しませた。アートフェア期間中、会場の別ホールでは、SBIアートオークションによる特別企画セールが開催された。
このセールでは”Bloom Now”というテーマのもと、現代アートの多様性を感じさせる、現代のアートシーンのダイナミズムを表した、選りすぐりの作品が取り揃えられた。通常のSBIアートオークションで開催されているセールと比較すると作品点数は少なかったものの、国内市場では流通の少ない作品など目新しい優品が揃い、見応えのある内容となった。落札総額は、7億43万500円(落札手数料含む・以下同)。オンラインや電話での入札も活発で、不落札はわずか5点で、落札率94.6%という高い成果を収めた。
黒田泰蔵の作品が予想価格を大きく上回る落札
セール序盤に出品された黒田泰蔵の白磁作品LOT.013《白磁花入》(高さ約17~35㎝程度、白磁、9点)は、落札予想価格200~300万円を大きく上回り、1897万5000円で落札され、注目を集めた。黒田の作品は、今年1月に開催されたセールでも競り上がりを見せ話題となった。今回も同様に活発な競りを見せ、好調を維持した。
トップロットを飾ったのは、草間彌生のアクリル・キャンバスの作品。草間の象徴的なモチーフである南瓜が白黒で描かれたLOT.034《Pumpkin》(22.0×27.3㎝)は、落札予想価格以上の1億1155万円で落札され、会場を大いに盛り上げた。次いで、松山智一の大型作品LOT.030《誠意ある放浪癖》(アクリル・ミクストメディア・キャンバス、262.0×185.0㎝)が高額落札となった。東洋と西洋、現代と古典、抽象と具象など対極する要素を巧みに融合させ、緻密で色彩豊かに描かれた特徴的な作品は、落札予想価格2000~3000万円に対し、5520万円で落札された。現在、松山は麻布台ヒルズのギャラリーで初の大規模個展も開催中(~5月11日)である。今後ますますの評価向上が期待される。
写真家・現代美術家の杉本博司、「海景」シリーズの動向を読み解く
今回は、杉本博司(すぎもと・ひろし1948-)に焦点を当てる。杉本は、時間や空間、存在の本質を探求した作品で知られる日本を代表する写真家・現代美術家である。写真芸術にとどまらず、舞台芸術や建築、造園など幅広い分野で活動し、国内外で高い評価を得ている。
本セールでは、セール中盤に1点の写真作品LOT.040《Mediterranean Sea, Cassis》(42.3 × 54.2 cm、ゼラチンシルバープリント、Ed.25)が出品された。本作は、杉本の作品の中でも特に人気が高い「海景」シリーズで、世界各地の水平線を上下均等な構図で撮影したモノクロ写真作品である。
同シリーズ作品の国内での落札データを抽出し、ACF美術品指標で動向を見る。2022年1月から2023年7月は、落札予想価格は150~250万円に対し、368万円で落札され、横ばい推移となっている。2023年10月に落札予想価格が100~150万円に下降する。それでも、345万円で落札され、堅調を維持した。2025年2月には、落札予想価格200~300万円に上昇し、落札価格は598万円に達した。本セールでは、落札予想価格180~280万円に対し、414万円で落札されている。2025年2月の高騰が目立ち、今回下落したようにも見えるが、依然として高い水準を維持している。いずれの年も落札予想価格上限の1.5~2倍程度で落札され、着実な推移を示した。現状での落札価格の目安は400万円前後となっている。杉本の作品は、海外のオークションでも活発に取引されている。今後の国内外での動向に注目が集まる。
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※次回のSBIアートオークション開催予定は2025年5月23日(金)・24日(土)
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